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「引き止めちゃってごめんなさい」
あなたは鬼に謝った後、河童にも頭を下げた。
だれにだって都合がある。河童少年だって川原でシュート練習をしていた。
これ以上あなたのために時間を使わせるのは申し訳ない。
「あの、あなたもごめんなさい。こんな夜中なのに、変なことにつき合わせて。わたし、ひとりで探します」
「わかった。今思い出したんだが、前に弟がここの東の辺りでリスを見たと言っていた。ウサギもいるかもしれない」
「ありがとうございます」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
ふたりと別れ、東に向かって歩き出そうとしたあなたは、焦った表情の鬼に止められた。
「こんな夜中に、女ひとりで山の中歩くなんて自殺行為だぞ。一もなんで止めねぇんだ」
「本人の意思は尊重すべきだろ」
「そういう状況じゃねぇよ! あーもう、俺もついてくからな」
「な、お人好しだろ?」
河童があなたに同意を求める。
「はあ……」
河童の骨ばった手が、ぽん、とあなたの頭に置かれた。
「あのな、この山は危険だって言っただろ? あんたになんかあったら、俺も寝覚めが悪い。遠慮なんかせず、ウサギ探しを手伝わせてくれよ」
「は、はい……ありがとうございます」
少年の手の重みが、なんだかとても心地良かった。
「あーあ、これだ。一のヤツ、天性のタラシでやんの」
「丸、行くぞ」
「へいへい」
あなたたちは、東へ向かって歩き始めた。
強い風が吹いてくる方角だ。
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