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狭霧町奇談  作者: @眠り豆


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71/156

★70

「……今日も、来てる、ね……」


授業中、窓際の席の友達が振り返り、口をパクパクさせて言葉を伝えてくる。

あなたは隣の席を見た。クラスメイトは、机に覆い被さって眠っている。

教師も注意をしない。

ずっと不登校だったので、登校してくるだけで充分だと考えているのだろう。

あなたは腕を伸ばし、持っているノートの端で彼を突っついた。

むにゃむにゃと、寝ぼけた声が返ってくる。


「……昨夜はストーリーモードの解析で忙しかったのじゃ……」

「きちんと授業受けないと、放課後ゲームセンターに付き合わないけど?」

「むー」


不満げに唸って、彼は体を起こした。

珍しい現象に、教室をどよめきが走った。教壇の教師も驚いている。

のん気にアクビを漏らすのは、天狗の雪比古だ。

同じクラスの隣の席だったのにはあなたも驚いた。しかしよく考えてみれば、あのアパートの前で会ったとき、彼とあなたは同じ制服を着ていたのだ。

悪霊を退治したことが認められて、あなたたちはC級退魔師になった。

子どもたちの霊に助けられただけだということは話したが、あなたはもう目覚めていた。

霊の姿を視、霊の声を聴いてしまう以上、対抗策を学ぶ必要がある。


(それに……)


自分の力の使い方を学んだら、まただれかの泣き声を聞いたとき、力になれるかもしれない。

アクビであふれた涙を拭った後、雪比古はノートになにやら書き始めた。

ちゃんと授業を受ける気になったようだ。

あなたも机の上にノートを広げた。


──つん、つん。


腕を突っつかれて、あなたは顔を上げた。

隣の雪比古が折り畳んだ紙を差し出している。ノートの切れ端のようだ。

手紙らしい。あなたは紙を広げて、書かれたものを見た。


(もしかして、ずっとこれ書いてたのかなあ?)


そこには文だけでなく、絵も描かれていた。

雪比古は絵が上手い。漫画研究部の友達がよく勧誘しているが、本人はめんどくさいと断り続けている。

描かれていたのは、犬をイメージしたことが一目でわかる少年と、猫をイメージした美少女だった。決めポーズを取ったふたりの上に吹き出しが浮かんでいた。吹き出しの中には、『ダークドッグ&キャットクイーン、ストーリーモードでも狭霧町ワンツー!』と書かれている。

オンライン対戦のカードゲームだった魔獣園だが、最近ストーリーモードが実装された。

デッキが弱くても、ある程度の時間を楽しめるモードだ。

アニメ化で増えたライトユーザーを逃さないためだろう。

このモードは複数で協力プレイもできるので、あなたはそのうちアニメ派の友達も誘ってみようと思っている。

今日は雪比古と遊びに行く約束なのだ。


(雪比古くんてば)


あなたは笑いを噛み殺して、手紙を畳み直した。

視線を感じたからだが、教師が見ているのは隣で満足そうに眠り始めた雪比古のほうだった。

ほとんど授業を受けていない彼の成績は、意外と良い。

在宅仕事の両親も、息子と同じようにめんどくさがりなものの、仕事の納期はきちんと守っているという。人も妖怪もそれぞれ、と思って、あなたは板書を始めた。


(あ、でもこれをイメージキャラクターにして、ゲームセンターの交流ボードとかに描くつもりなら、デザイン変えてもらわなくちゃ)


もっと、犬! という感じがいいのだ。

だからあなたは、愛用しているアヌビスのカードのVジャンクションはしていない。犬耳の美青年よりも、犬頭の神さまのほうが好きなのだ。

狭霧町の新米退魔師コンビは、カードゲームの新モードでも華々しいデビューを飾るだろう。


<雪比古 日常END>

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