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──いつもの時間にあなたは目覚めた。
妙な夢を見ていたような気がしたけれど、思い出すことはできなかった。
思い出さなくてもいいと、だれかに言われた気もした。
いつものように制服に着替え、いつもの通学路の不気味なアパートの前を通りかかったあなたは、その建物が取り壊されることを知った。
(なんだか今日は、あんまり怖く感じないな。まあ、わたしは霊感なんかないから、最初からただの気のせいなんだろうけど)
思いながらアパートを通り過ぎて、あなたはふと、自分の手の平に目をやった。
そこにはなにもない。あなたは石も土の塊も握り締めてはいなかった。
だけど──
だれかに強く掴まれた、骨ばった指の記憶が残っている気がした。
(気のせい、よね……)
あなたは学校へと歩き出した。
後ろから子どもが幸せそうに笑う声が聞こえた気がしたけれど、それもきっと気のせいだ。
<NORMAL END>




