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あなたは風がざわめきを運んでくる南へ向かった。
この森は山の中にあるらしい。急な傾斜の坂道を登る。
(……狭霧山かな?)
あなたは自分が狭霧町に住んでいること、その町から電車で2時間行った場所にある山が町と同じ名前だということを思い出した。
どちらの名前も霧の出る日が多いことに由来している。
狭霧山には鬼や天狗が住んでいるといわれていた。昔は龍神山と呼ばれ、龍神も住んでいたのだという。
霧のせいで足元がよくわからない。
何度も転びそうになりながら、あなたはざわめきの源に辿り着いた。
木々の向こうで大きな焚き火が燃えている。
あなたは木の幹に隠れて、そっと向こうを窺った。
離れた場所にまで届いていたのに、そこにいるのはたったひとりだった。
とはいうものの大声でひとり言を呟いているので、ほかに音のない夜の森では響いてもおかしくはない。
「はーあ。今夜は野点だぜ? こんなん置いてちゃ雰囲気ぶち壊しだろうが」
ジャージ姿で唇を尖らせる少年が手にしているのは、皿いっぱいに盛られた団子の山だった。大柄で筋肉質な彼は十代後半くらいだろうか。あなたと同じ年ごろだ。
赤字に黒い線の入ったジャージに見覚えはない。
「大体このサイズじゃ意味ねぇじゃん。爺さま、ボケてんじゃねぇの?」
あなたは──
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