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──あなたは、自宅のベッドで目を覚ました。
なにか夢を見ていたような気がしたが、内容は思い出せない。
あなたはいつものウサギ柄のパジャマを着ていた。
手にはなにも握っていない。
ただ、寝ている間に引っ掻いたのか、爪で刺したような痕が残っていた。
なんだか不安を感じたが、お腹が減ってそれどころではない。
階下の台所から、美味しそうな匂いが漂ってくる。昨日夕食を摂らなかったあなたを心配して、母が特製のフレンチトーストを焼いてくれているのだ。
あなたはベッドから出て、大きく伸びをした。
壁に立てかけた大きな鏡に目をやって、凍りつく。
「……え?」
振り向いても、だれもいない。
けれど視線を鏡に戻せば、あなたの背後に立って肩に手を置いている女性が映る。
長い長い髪を垂らしているので、顔は見えない。
ねえ、と耳元で囁かれて、あなたは昨夜の夢を思い出した。
夜の山をさ迷って、傾斜を転がり落ちて巨木にぶつかった夢だ。
ぶつかる寸前に、あなたの目は木の枝からぶら下がるなにかをとらえていた。
それはきっと、今後ろにいる女性の体だ。
ねえ、ともう一度彼女は言う。
生き返りたいの、あなたの体をちょうだい、と──
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