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やるべきことをして、あなたたちは二階の外廊下へ出た。
幻の世界だけど、風は吹いてくる。
「んー」
霊力を運ぶ仕組みを壊したことで結界が薄くなったので、退魔師を呼ぶと言っていた雪比古が首を傾げていた。
「どうしたの?」
「この腕輪をどうすれば、退魔師たちを呼びこめるのかがわからぬ」
「教えてもらわなかったの?」
「……向こうはしゃべっていた。ただ、吾は立ったまま寝ておった。それだけのことじゃ」
「雪比古くん!」
「そもそもこういうものは、もっと直感的に使えるべきものであろ? スマホを見習え」
つついたり引っ張ったり、しばらく赤い腕輪と格闘していた雪比古は、やがて諦めた。
「仕方ない。悪霊を倒しに行こう。ほかに結界を破るすべはないからのう。そなたも手伝ってくれ」
「……いいけど」
幸か不幸か、あなたは彼の思考回路を理解しつつあった。
とてつもないめんどくさがり、なのだ。
自分で悪霊を退治するなんてめんどうくさいこと、ほかに手段があるなら選ぶわけがない。
雪比古は、いかにもめんどくさそうに、のたのたと二階の西端に立った。
なにもない壁を指差す。
「たぶんここが悪霊の本拠地じゃ。そなたなら開けられるであろ」
「え?」
ほかに方法がないのは理解しているけれど、一気に突っ込んでいいのだろうか。
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