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☆130
あなたは部屋の畳を持ち上げた。
実体のない幻は、姿を真似た現実と影響し合っている。
乾いていても重たい畳は、水を吸ってさらに重さを増していた。
「……はあ」
やっとの思いで持ち上げて、ずらす。
そこには床板がなかった。
すぐ地面になっていて、中央に古い井戸がある。
井戸の入り口は苔むした板で塞がれていた。
嫌な空気が漂ってくる。本能的で気づく。──死臭だ。
「……っ」
あなたは井戸を見つめながら、後ろへ下がった。
井戸を塞ぐ板と板の細い隙間から、にょろりと黒い物体が顔を出したからだ。
最初は隙間に見合った、紙のように薄い物体だったが、それは外に出るなり膨らんだ。
丸まった頭の後ろに細い体が続いている。
蛇だ。
それは鎌首をもたげ、赤い舌を出した。
悪霊の邪悪な霊力から生まれた蛇は、舌と同じ色の赤い瞳であなたを見つめる。
どうやら敵だと認識したらしい。
殺気が押し寄せてくる。
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