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狭霧町奇談  作者: @眠り豆
110/156

★109

「今日もカレシ来てるよー」


窓際の席の友達が立ち上がり、ニヤニヤ笑いながらあなたを突っつく。


「そんなんじゃないよ。バイトの同僚」

「今日、バイトじゃないじゃん」

「まだ慣れてないから、いろいろ教えてもらう約束してるだけ。……じゃあ、また明日ね」

「うん。バイトもカレシもいいけど、今度遊びに行く約束は忘れないでよ」

「当たり前でしょ」


今度の日曜日、あなたは友達と遊びに行く約束をしていた。

ゲームセンターに行くのだ。


(美鳥ちゃん、ゲームのほうにもはまってくれたらいいな)


あなたの好きなゲームが深夜アニメになったので、漫画研究部に所属するアニメや漫画好きの友達が興味を持ち出している。

日曜日は一緒に楽しみたいと思いながら、あなたは彼女と別れて校門へ向かった。

立っているのは、あなたの通う学校の制服とは違う、学生服を着た少年だ。

学生服が制服の学校は近くにもあるけれど、彼が着ているものとは違う。

近くの男子校は柄が悪く学力も低いことで有名だったが、あなたを待っていた少年の学校は逆に、セレブが多いことと学力の高さで知られていた。


「刃くん、お待たせ。遅くなってゴメンね」

「気にしないでください。待ってるのも楽しいんです」


学校の前で待ち合わせて、お店に寄り道しておしゃべり。

そんななんでもないことが、退魔師として特殊な日々を送る刃には、特別らしい。

あなたたちは学校近くの駅前で、コーヒーショップに入った。

贅沢にケーキも注文する。

見習い退魔師として修行を始めたあなたは、先日初めての実習兼仕事として、例のアパートの跡地を浄化した。結構な額のバイト料をもらったので、懐は温かい。

友達に秘密なのは少し寂しいけれど、あなたはこのバイトが気に入っている。


「小銭あります。えっと……あ」

「窓際が開いてますよ」


財布を取り出すのにもたついていた隙に、刃に支払いを終えられてしまっていた。


「五行のこと教えてもらってるんだから、わたしが出すのに」

「気にしないでください。僕のほうが兄弟子なんですから」


あなたは珠樹の弟子、刃の妹弟子になったのだった。


「それに僕のほうが収入も多いですしね」


窓際の席で椅子に座り、あなたは溜息をついた。

バイト料はもらえるけれど、あなたはあくまで見習い、プロではない。

しかし刃は違う。師匠の珠樹にこそ半人前扱いされているものの、彼は最年少のS級退魔師として知られていた。


「それじゃ五行の勉強を始めましょうか」

「はーい」


あなたは自分のノートを取り出した。

一ヶ月前の自分に今の状況を話したら、きっと信じないだろう。


「いつつの属性には、互いに生じ合う『相生』の関係と互いに害し合う『相剋』の関係があるのよね」

「ええ。まあ、あなたみたいに、木気の悪霊を木気から生じる火気で倒して浄化してしまうようなトンデモさんもいるんですけどね」

「……はーい」


この狭霧町で、あなたはこれから退魔師として生きていく。

頼りになる兄弟子と一緒に──


<刃END>

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