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狭霧町奇談  作者: @眠り豆
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二階の東端、角部屋の前で止まり、刃はドアノブを握った。

ガチャガチャとノブを回すが、扉は開かない。鍵でもかかっているのだろうか。

刃があなたに手招きした。


「試してみてもらってもいいですか?」


頷いてドアノブを握る。

冷たい。彼の体温は残っていなかった。

あなたが軽く手首を回すと、鉄の扉はあっけなく開いた。

驚くあなたに、刃が説明してくれる。


「昨夜巫女にされかけたことと、あなたが自分の力で悪霊の端末を滅したことで、あなたたちには絆が生じているんです。だから僕やお師匠には閉ざされている扉でも、あなたには開くことができる……まあ、嬉しいことではないでしょうけど」


あなたたちは部屋には入らず、戸口から室内を見回した。

畳敷きの狭い和室、東の壁一面に鏡が飾られている。

壁に釘を打って、紐でぶら下げているのだ。

土でできた壁は膨らんだり凹んだりしているので、鏡は床に対して垂直ではなかった。

畳を映した鏡は、窓からの光を反射して反対側の壁を照らし出している。

光の動線を瞳で辿って、刃が頷いた。


「なるほど」

「なるほどって?」


刃が畳を指差した。


「下の部屋に子どもたちの霊が封じこめられています。この鏡は、子どもたちの霊力を悪霊のところへ運ぶ呪術装置なんです」

「……っ」

「お師匠を呼びますね。僕たちふたりでもなんとかできると思いますが、失敗して子どもたちを苦しめるようなことは嫌ですから」


あなたは力強く頷いた。

畳を見つめる。階下から子どもたちの悲痛な泣き声が響いてくる気がした。

外廊下の手すりから身を乗り出した刃が、下の珠樹に呼びかける。

閉ざされた鉄の扉を見つめるあなたの目には、今も鏡の反射光が残っていた。


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