表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狭霧町奇談  作者: @眠り豆
107/156

106

教室から出てきた刃の顔は、あなたの姿を認めて蒼白になった。


「……どうして」

「うちの学校の漫画研究部、ここの漫画研究部と交流があるの。わたしは漫画研究部じゃないんだけど、友達につき合って来たんだ」

「そうですか……」


刃があなたから顔を背ける。

あなたは携帯の時計を確認した。

荷物持ちとして来たので、しばらくしたら友達に合流して、この学校の漫画研究部に借りる資料を運ばなくてはいけない。──資料と称した漫画なのだが。


「刃くん、わたしより年下だったんだ。そういえば自己紹介のとき、お互い年齢や学年を言わなかったもんね。全然気づいてなかった」

「秘密にしてたんです」

「えっと、刃くんが年下でも、これからもちゃんと兄弟子として尊敬するよ?」


刃は唇を尖らせた。頬を赤く染めて俯き、ボソボソと呟く。


「そうじゃなくて……女の子は、年上の男のほうがいいんでしょう?」

「え? ゴメン、よく聞こえなかった」


溜息をつき、刃は顔を上げた。


「なんでもありません。携帯鳴ってますよ」


友達からだった。もう準備ができたらしい。


「それじゃまたね。ここの漫画研究部に借りた資料持って帰るの手伝わなくちゃ。刃くんの顔が見たくて、ちょっとだけ抜けさせてもらったんだ」


歩き始めたあなたに、刃が並ぶ。


「刃くん?」

「手伝います。僕、帰宅部なので、後は帰るだけなんです」

「そうなんだ? ありがとう」

「それと僕、あなたの学校に転校しますから」

「いきなりだね」

「本当は前から話があったんです。霊力の強さに反して経験の浅いあなたには、だれかサポートがいたほうがいいだろうって」

「刃くんはいいの? 学校の友達とか……」

「退魔師のことは秘密にしないといけないので、あんまり親しい友達はいないんです。実はあなたの学校には、退魔師関係の存在がほかにもいて、だから行ったほうが楽しいだろうなって、前から思ってはいたんです。……ただ同じ学校に行ったら、あなたに年下だってバレちゃうから」

「安心して。ちゃんと妹弟子として年下の兄弟子をリスペクトするから!」

「……年齢以前の問題みたいですね」

「なぁに?」

「なんでもないです」


(刃くんが転校してきたら、楽しくなるな。ほかにも退魔師関係のだれかがいるなら、みんなでそういうクラブ作っちゃってもいいかも)


楽しい想像を始めたあなたが、隣を歩く刃の熱い視線に気づくのは、まだまだ先の話になりそうだ。


<エピローグ 刃>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ