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003.

豪奢な装飾を施した馬車は行く。


行き先は、とある有名な神を崇める教会。それも本部で、ダリアという国の第一都にある。この国における東京だ。

ちなみにセスの実家は、埼玉くらいの場所。


で、教会の神の名はセスなのだが……御神体ここにいるわ。

俺だよ俺!

飾ってある石像と成長した主人公はそっくりだから、そのうち石像とお揃いになるぞオイ!


大問題しかない。


……ここでざっくり世界の表向き(、、、)の設定を説明。


一、大昔に主人公とヒロインがイチャコラして他の神を作って、そいつらに世界の管理を任せてスヤァした。この頃はまだ死の概念はない。


二、神が信者の取り合いで大喧嘩して、世界に亀裂が走る。要するに天地創造。


三、異常事態に気がついたヒロインが主人公を叩き起こそうとするが、他の神によって両方とも屠られる。結果として世界に死という概念が蔓延。同時に魔力も拡散。


四、猛反省した他の神が手を取りあい、謎の儀式をして主人公とヒロインを蘇らせようとする。許しをこうためだが、失敗して、バカップルは人間として再生成。

神様はこれをまだ知らない。


教会の主な御神体はセスに統一されている。オプションとして他の神様が付く感じだな。

何故ヒロインである女神の影すらないのかが気になるが……他の作品の影響が出ているのかも知れない。


そうこうしている間に馬車が止まった。やっと目的地に着いたのだろうか。

クッション挟んでても尻が痛い……。


因みに仮マザーはここにはいない。

同行しているのは護衛の優男と熊男。それから乳母とその娘だ。

何故かって?

仮マザーが家をきりもりしてるからだろう……そう思っておく。

乳母の娘までついてきてるのは、俺と同い年だからだ。しかしこの年まで会話らしい会話をした事がない。会うまでは、密かにヒロインではないかと思っていたが、それにしては身長が高い。髪の毛、黄緑色だしなぁ。


まだかまだかと待っていると、馬車が横揺れした。なんだ、イベントの匂いがするぞ。


護衛の熊男(その名をベアーズ)が頭をガシガシやりながら、俺に向かって(、、、、、、)言ってくる。


「あー、動かないでくださいよ」


動く気満々だがね。

しかしまぁ表面上は頷いて肯定の意を示す。

ベアーズは疑いの眼差しを隠そうともしなかったが、馬車はなかなか動かなかったので巨体を揺らして出ていった。

優男の方は元々馬車の外。戦力、というより監視の目が、両方離れた事になる。


これはいい。

しめしめと馬車から降り、ようとしたら、誰かが俺の服を引っ張った。

首だけで振り返ると、黄緑色の大きな瞳と会う。乳母の娘、リョクカだ。緑化運動のリョクカ。


「こわい、です……」


かぁいい、です……。

しかし俺に幼女趣味はない。

どちらかというと手のかかる妹枠といったところだろうか。向こう側でニヤニヤする乳母を殴りたい。グッジョブ我が娘よ、とか思っているに違いない。


ロマンの波動を感じて戸惑っていると、外から聞こえたのは悲鳴。優男の制止する声に被るように、熊男ベアーズの怒号……流石に出ていかないとイベントが終わる!


もはやジャーマン・スープレックスする直前の拘束具合になっていたのを何とか緩める。そして身体をねじって耳元でそっと囁く。


「俺が守る。絶対だ。だから、ここにいて」


こんにちは、俺五歳です、

愛の告白ではないぞ決して。忘れてくれたまへ!

しかしあぁ後々言われるんだろう。

そうこれは伏線だ。


「あの日の約束、覚えてる?」


の。


しかし反射的に飛び出た言葉は物のようにはしまえない。言い訳するのも男らしくないだろう。

俺は口をつぐみ、リョクカの手を解いていく。真っ赤になったリョクカの拘束は、その締まりのない顔と同じで緩々だった。


俺は馬車を抜け出す。


そこには、本当の五歳児ならトラウマになっていただろう光景が広がっていた。

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