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『有力者』


「あー、次は私……か。提案なんだけど、私が言ったら終わりにしよう」

「なんで?」


 なんでってそりゃあ。

「私が言ったら、ほら6話めだからだし。七不思議って7つ知ったら不穏なことが起きるって言うしね」

「あー、そうだっけ?」

 とは、私の隣の男子だ。


「その辺りは色々諸説ありますよね。ボクが知っているのだと、8つめを知ったらヤバいとか色々」

「うん、そうそう。私はよくて6つめと聞いているから、6で止めたい」

「ボクも正直7つとか8まで要らないかな……。もう、怖い話はこりごりだよ」


「じゃあそういうことを言うならそういうことで」

「よし、じゃ最後のトリは――」

 任された。


――※※――――※※――――※※――



 さっき、イジメで殺人のハードルが下がっていくって話あったけど、似たような話ね。

 ちょっとこれは、私の話じゃなくてお兄さんの話なんだけど。

 やっぱり、お兄さんの学生時代のときにイジメがあったそうで、それはそれは陰惨だったそうなんだ。

 上履きに画鋲(がびょう)とかは当たり前。

 見えないところで殴る蹴るの暴行。


 当時は中学生でありながらタバコとか買えてたらしくて、学校の裏にある雑木林とかでスパスパして、そのイジメられていた人が連れて行かれて、制服の上から腹とか背中に靴の跡が付くぐらいに、蹴られ暴行された。

 胸にはタバコの吸い殻を当てられ焼き印を作り、お金を持っているかで身体検査をさせられ、財布を持っていれば強奪され、いつもお昼は当然食えず、それどころかバスにも乗れず、歩いて登下校するようになり、自転車で通おうとするも自転車も奪われた。

 自転車に張られた本人確認用シールも潰され、盗難届を出しても帰ってくることはなく、自分で見つけたときは田んぼ近くの用水路で折れ曲がり、完全にスクラップになっていた。

 コンビニの万引きを強要されたとか、とにかく多かったらしい。


 そのイジメられていた人は、いわゆる体育会系の人でお兄さんは大親友だったらしい。

 といっても、付き合いは中学校からで、お兄さん自体も元々小学校の時代にイジメを受けていたそうだ。

 というのも、赤ちゃん言葉というのかな。


 ほら、私たちってもう特に気にせず「た」は「た」というけれど、お兄さんは「た」と言ってても他人からは「か」として聞こえるというような、赤ちゃん言葉というのか、そういう病気……でもないけど、そういうハンデがあった。

 お兄さん本人から聞くと、口腔内の舌の使い方がちょっと足りなくて、舌が自由自在に動くように訓練してまともに動くようになったらちゃんと「た」行と、「さ」行、「は」行が言えるようになったとか言ってたけど、ま、それはどうでもよくないけど、どうでもよくて。


 そういうことがあったから、イジメられてたんだけど逆にイジメ返したらしいんだよね。

 お兄さん。

 人のものを奪うなら、奪い返すって感じで上履き隠されるなら、筆箱を隠さないで焼却炉にポイしたり、家庭科の授業でナイフとフォークでブスブス刺してきたら、包丁を持って襲いかかるとか、とにかくやり返しして、警察沙汰にしまくったそう。

 向こうの親御さんもそんな危険な生徒云々というけれど、こちらはイジメられているんですよと前面にだして、何度も教育委員会を相手にお互いが喧嘩して……いる内に、お兄さんがいじめっこの親分と仲良くなったみたいで、そこからは攻撃的なことは鳴りを潜めて、実行犯が段々とハブされて……となった。


 そういうことがあって、不良……とまではいかないけれど、そういう小学校からの付き合いのヤンキーと仲良かったお兄さんは、中学校に上がって割りと真面目そうな体育会系のその人とは一瞬でマブダチだっけ、まぁ親友になったそうなんだ。

 親友になってお互いの家に上がり込むことも多くなったとかなんとか。

 そんなイジメられた人は、なんでもその地域のお偉いさんというか土地貸しというか、とにかく有力者で有名な人の一族。


 中学校が出来る前からその地域に一族がいたっていうぐらいに、ふっるい一族の人で、お兄さんが遊びに行く度によくしてくれたそうなんだ。

 夏に遊びに行けば、わざわざスイカを冷やして塩掛けて食べるとか、とにかく楽しかったとはお兄さんの弁。


 そんな中、その人がイジメられているという噂が中学校2年のときに立った。

 最初の一年は同クラスだったけど、2年のときにクラス分けがあったそうで。

 で、最初のうちは嘘だと思ったそうなんだ。


 だって体育会系だよ?

 殴ったら力強いし、正直お兄さんは殴り合いになったら勝てないと思ってた。

 そんな人がいじめられる?

 逆にイジメ返すような人だと思ってたそう。


 それにまだまだ付き合いもあったから、話せばそういうことを感じさせないかのように快活に笑い飛ばしてくるような人だった。



――でも。


 それは嘘だったんだって。


 というのもそもそもの発端は、そのクラスの教師が悪かった。

 男性だったんだけど、その一族のことが嫌いだった。


 お兄さんもよく聞いていなかったようだけど、地域の教育委員会にもその関係者がいたそうなんだ。

 その教育委員会と折り合いが悪かった、その教師はその生徒を八つ当たりするかのように、相手した。

 そうしたところ、クラス内で「カースト最下位にしてもよいと、『先生』という最上位の存在からお墨付きを貰った」ということで、イジメが開始された。


 それを知ったそのクラスにいた、ヤンキーの手下がヤンキーに報告……で。

 お兄さんにもその話が回ってきた。

 お兄さんとそのヤンキーさんが小学校時代からの……そりゃもうホモォとまではいかないけれど、やっぱり付き合いが……たしか四年かそこらのなっがい付き合い。


 親友(おにいさん)親友(ひがいしゃ)は親友だということで、動いた。

 教育委員会も巻き込んだみたいだけど、結局どうにもならずに、イジメられていた人は転校した。


 最後にお兄さんに「転校する」と言ったその親友の姿は、あんなに体育会系っぽい姿だったのに、やつれて傷だらけでただ泣いていただけだったんだ。



 それから恐ろしいことが起きた。

 そのクラスの教師さ。

 あ、死んではいないよ。

 ただ、幸せの絶好調の新婚さんだったけど、破局離婚。

 クラスもぐっちゃぐちゃ、売春だかなんだかでとにかくぐっちゃぐちゃになって、そのクラスの人たち……といってもヤンキー手下さんは見逃された? らしいけど、とにかくそんな感じになって、そのクラスの最終学歴のほとんどが中卒になった。


 とか、なんとか。


 

――※※――――※※――――※※――


「そんな、怖い話」

 

 地方の有力者相手によくやるよね……って話。




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