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『自殺』



「ほへー」


 みんな凄い話ばかりだ。


 今あった『二重影(ドッペルゲンガー)』の話はなんとなく、切ないし。

 あからさまに嘘っぽく見えるけど、『椅子取りゲーム』とか誰でも出来て、裏になんかありそうな儀式に見える。

『七不思議』だって何か裏がありそうだし。


 そんなのに比べてボクは今までに怖い体験談はそんなにない。


 でもボクは負けたくはない。

 身長低くて、色々割りと小動物的に可愛がられることが多いけど、ボクだって空気読んで乗っかかることぐらいは出来る。


 よし、気合は入った。

 いくぞ!


――※※――――※※――――※※――


 自殺って見たことある?


 一番有名なのはやっぱり首吊りだよね。

 自分の背より高ければ、誰でも出来るから一番メジャーだと思うんだ。


 ボクなんか身長160cmしかないから、この旅館の梁に縄を引っ掛けて天井近くで吊るようにすれば、すぐにできちゃうぐらいにお手軽……な『首吊り』。


 あとは走っている電車に飛び込んで、ひき肉ミンチになる『飛び込み』とか。

 東京の端っこの某駅だと、割りとその意味で有名な駅あるけど、通学路に使っているとホント止めて欲しい。


 あとは練炭とか硫化水素といったじわじわ系とか、服毒とか手首切ったとか……まぁ色々。


 その内、ボクがみたことがあるのが、『飛び込み』、『飛び降り』そして『感電』。


 と、言っても最後の『感電』は自殺……じゃないんだけどね。


 まず『飛び込み』だけど、まぁ通学路として使ってるからね。

 見ちゃったよ。

 3回ぐらい。


 1回めは駅で電車を待ってたときに、水風船を割ったときのような音と共に電車の頭に赤いがべったり付着した状態で進入してきたのが、初かなぁ。

 うわっと思った。

 もちろん、うわっと思ったのは『これが人身事故か……!』っていう意味合いのものと……。

 ボクはそんなことをしなかったけど、周りの人は携帯電話のカメラ向けてパシャパシャ撮ってる姿を見て、だね。


 2回めはマジで目の前で起きた。

 その駅とは違うんだけど、ほら特急電車って停車しないところだと停まらずに駆け抜けるじゃん。


 その通過電車が進入したと同時にさ、リュックを前に持ってさ線路に向かって走って行く……まだおじさん。

 いや、まだ若いお兄さんかな。

 とにかく、そんな人が飛び込んでパンっと、また例の水風船が割れたような音と、身体が車輪に巻き込まれるかのような、異物音が響いてさ。


 走ったときにちらっと見たけど、左の薬指に指輪が嵌ってたからさ。

 多分、既婚者のはずなのにさ。

 そんな人が飛び込み。

 電車止めると遺族に莫大なお金の請求があるっていうし、奥さん可哀想と思ったぐらいだったな。


 目の前で起きたことで、水風船の中身をボクも被ったから、正直もうね。

 それ以外考えられない。

 それ以外を考えたら、例えば今自分の周りの池のこと考えたら破裂しそうだと思ったんだよね。

 もう、笑い話と言ってはあれだけど、こうやって言えるようにはなってるから、幸いトラウマにはならなかったみたいだけど。


 最後の3回めは、電車の一両目に乗っててね。

 車掌さんの運転というか運転席から前を見てたら、轢いた。

 ビシャアとどこかのペンキ使った前衛アートのようなことは、なかったんだけど。

 轢いた瞬間に足元というか車輪が何かを踏んだような揺れがさ、やたらとリアルでね。


 それも石とかそういうのじゃなくて、柔らかさを感じるような……いや、言葉に言い表せられない。

 そんな衝撃。

 


 次に『飛び降り』これは1回だけ。

 これはほら橋の上から飛び降りちゃ駄目ってあるのに、川遊びの一貫で飛び降りたりする人いるけど、あれで実際に飛び降りて浮かび上がってこなかったってことが、あった。


 いや別にこう、海の中から腕が伸びて押さえつけていたとか、引っ張ってたとかそういうのは特にみなくて、ただまぁ浮かばなくて。

 ボクだけじゃなくて、側にいた名も知らないおじさんお兄さんたち総出で、潜って探したりしたけど、どこにもいなくて、結局川下まで流されていて、持っていたものに遺書があったから自殺ってことになった。


 でも、飛び降りたとき、遺書があったという割には何も持ってなかった気がするんだけど、深く追求するのも怖いし、きっと大人の事情だと思う。



 最後の『感電』は……さ。


 自殺の類かと思ったけど、今良く考えたらやっぱり事故、または殺人かなあとも思う。

 何をやったかというと、学校の授業で電気を扱ったんだ。


 コンセントの穴にシャーペンの芯突っ込んでビリっと感電……というのは、ある意味お約束なんだけど……。

 正直、ボクは別のクラスだったから、何があったかは知らない。

 けれど、あった……という事実は。


 イジメられていたとよく聞いていた人が、その感電で死んだ。

 という話。

 先生の話を信じるなら事故、その人のクラスメイトの話を信じると自殺。

 イジメられていた人の両親の話を聞けば、殺人。


 シャーペンの芯じゃなくて、電源ケーブルの被覆を破いて、導線剥き出しにしてその人の背中とお尻に貼り付けて、コンセントの穴に挿入。

 で、感電死。

 ちょうど、静電気を故意的に発生させる器具を使って軽い感電をしてみようとかいうのをやったみたい。

 その静電気でバチッといったときに、コンセントの穴に挿入してバヅンと一撃。


 で、授業が終わってイジメられてた人が移動しないから、先生が触れてみたら軽く感電した。

 それでも生徒のほうが動かないから……、で亡くなっていたという話。


 この殺人の話はお尻と背中に火傷の跡があって、ついでに近くに(ほぐ)れた電源ケーブルがあったから殺人だと思われたけども、肝心の犯人が分からないし、色々訴えられた……らしいけど、当時はボクも子供だったしどうなったのかは分からない。




――※※――――※※――――※※――


「で、これの怖いと思うのは、イジメが高じて殺人に発展したということが起きるということだよね。

正直、殺人って聞いたら、頭がおかしい……といっては変だけど。

なんか、こうナイフに舌舐めずりするような変態が、切り刻んだりとか、嫉妬(おもい)が高じて殺人とかそういう系ばっかりだと思ってたけど、イジメで殺るとか」


 なんというか、その。


「無邪気に出来ることから、殺人のハードル下がってきているよね。ボクのなかのそのイメージもお父さんやお母さんが、『殺人する人と言ったらこれ』と言ってたぐらいのイメージだし。ボクたちが大人になって、ボクたちに子供が出来て、その子供たちがさ。学校に通ったとき――」


――どんなイジメ、どんな殺人が起きるかな?

 と(おと)は出さずに、言った。


 というわけで、


「この話はおしまい」



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