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『椅子取りゲーム』


「じゃあ次は僕がいこうか」

 僕には彼女のように怖いと思わせるような話なんてない。

 あるとしたら事実だけ。

 僕が個人的に怖いと思って、その『怖い』に自分なりの解釈を入れて台無しに使用と思う。


――※※――――※※――――※※――


『椅子取りゲーム』という遊びがある。

 円状に椅子を配置して音楽が鳴っている間は椅子の外周を周り、音楽が鳴り止んだら椅子に向かって殺到する。


 昔、僕がいた学校にはこれの応用をした『こっくりさん』が流行ったことがあった。

 こっくりさんというものは集団で掛かる催眠とよくいうけれども、正直実際に目の当たりにすると集団で催眠に掛かったとは思えない。


 なにせ、みんなが指を離しても10円玉が勝手に動くんだ。

 あれはみんなで動かしたとは思えないし、みんなで幻覚を見たとも思えない。


 個人的にこっくりさんというのは、降霊術だと思っている。

 こっくりさん……(きつね)(いぬ)(たぬき)と書いて狐狗狸(こっくり)さんというし、今言った動物って化けるしね。


 僕の従兄弟のお兄さんが漫画を見てこっくりさんが一時的に流行った……というのだから、やっぱり僕がいた学校にも流行らない理由がなくて、まぁ、一瞬で……ね。


 で、実際に体験して「お帰りください」とお願いしても帰らなくて、指を離しても勝手に動き出すわけだから……ね。


 すぐに禁止令が出されて、鳴りを潜めた……んだけど、やっぱり禁止されると「本物なんだ」と思うんだろうね。

 隠れてやるのは当たり前で、従兄弟のお兄さんの時代とは違って、ほら僕たちってスマホとかガラケーとかインターネットって身近なものじゃん?

 色々なこっくりさんに手を出したんだよ。


 その手を出した中に降霊術があった。

 それが『椅子取りゲーム』だった。


 詳細は……ごめん。分からない。

 参加しなかったんだ。

 確かその日は、友だちとネトゲやるとかなんとかで参加を断ったんだと思う。

 ただ、「椅子取りゲームやる」って言ってただけなんだけど。


 オチから言うとご想像通りに事件になった。


 門限になっても帰ってこない。

 で、山狩りとかしてもいないし、どうしたもんかと思えばほんの二時間で長野県の雪山の(ふもと)にいたとか。

 詳細は余り聞かなかったけど、麓にいた奴に詳細を聞くと……椅子取りゲーム中にて音楽が鳴り止んでいなくて、みんなが椅子に座ってもいないのに輪から弾き出されたと思ったら、寒い雪山にいたとかなんとか。

 しかも、その音楽というのもみんなで般若心経とは違うらしいけど、似たようなのを歌って、右手は前の人右手と握手、左手は後ろの人とって感じで手を繋いでからの外周周りだそうだ。


 結局は数人は長野が遠くて、埼玉とか千葉、茨城に飛んだ奴がいたけどニュースにはならなかった。

 だって、集団で椅子取りゲームをやっただけで、神隠しに遭うんだよ?

 こっくりさんが原因であれば、こっくりさん禁止とオチがつくけど、みんなが知っている遊びの『椅子取りゲーム』が実は危険でしたとか、出来るわけがないからニュースにならずに、それどころか神隠しも一切触られずに終わった。

 学校での流行も終わった。


 因みに実行者というか発案者は、転校した。

 その後、どうなったかは知らない。


 で、その事件を最後にこっくりさんも廃れた。


――※※――――※※――――※※――



「ということを体験したんだ」と僕は嘯いた。


 みんなは「ふーん」という顔だ。

 まぁ確かに怖くはない。

 体験者だと実際に文字通り体験しているわけだから、怖いと言い切れるけれど、僕の語りが弱いというのもあるだろうけど、敢えてそれを他人に言うのは難しい。

 体験している訳ではない。


 だからリアルタイムな怖さが相手に伝染(うつ)らない。

 それは僕の力不足だと思う。


 でも、どうすることも出来ない。


「なにか、感想あったら――」


 と言っても、みんなは特に反応も示さず。


 僕の中の怖い話の弾はあとひとつ。


 これに反応してくれると嬉しい、と思う。



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