鬼を創った少年
「貴方は一体誰ですか?」
絶無は死音にかわらされた。
死音の瞳が紅く光る。
「僕かい?僕は黒兎。鬼を創りし者だよ」
「お前が鬼を創っただと?」
「そう、僕が鬼を創ったんだ。だから、乱楼鬼の事も、よく知ってるよ。彼女は本当に強いからね。些か、一回だけまかされたよ」
「………………」
「ん?どうして、君が出てくるんだい?乱楼鬼」
乱楼鬼は嫌そうな顔で、黒兎を見た。
喋る訳でもなく、何かしら動く訳でもない。
「はぁ……君はどうして、何も喋らないんだい?」
「………………」
「喋らないと、この子の存在消すけど?」
黒兎は乱楼鬼が使ってる身体を指差す。
すっと、スケッチブックとペンを取り出した。
そこにすらすらと文字を書く。
「ん?」
スケッチブックに書かれた言葉があった。
『人間と鬼では少し発声器官が異なるから、喋れない』
と、書いてあった。
「ん?あれれ?僕一応人間と同じ発声器官にしたはずなんだけど?」
またしてもすらすらと乱楼鬼は書く。
『音の出し方が微妙に違う。だから、化け物の発音になってしまう』
「うわぁ……。久々に失敗したんだ。まぁ……それよりも、何故君が表に出てきたかを話して貰うよ」
『話すではなく、書くが今の状態に合っている』
「……確かに」
『そう言えば、表に出てきた理由か。お前が一瞬だけだが、暴走しそうな臭いがしたからだ』
「‼︎……相変わらず、直ぐに分かるんだね。流石僕が創った最強の鬼だよ」
『ふ……メンタルは最弱だがな』
「そこは、自慢するとこではないからね?」
『関係なかろう。だが、また暴走しそうとは何事だ?』
「ふふ、ちょっとばかしやってしまったんだよ。ほら」
黒兎はぺらりと服をめくった。
そこには、再生しようとしているが、何かに遮られて、再生できない傷ができていた。
『人間が作った対鬼用の武器ではないな。……呪詛…呪いの類いが混ざっている』
「あーそれで、中々傷が再生しないわけだね」
『理由が分かったならそれでいい。だが、私も一つ聞きたい事がある』
「何かな?」
黒兎はくすりと笑う。
『何故、我らの事をこの子に話してはならんのだ?』
「それね。今のその子の状態じゃ、何も分からないよ。まだ、君の話は信じてくれるからいいが、100%その子の中にできた、沢山の人格に関しては、信じてはくれないでしょ?」
『確かにそうだが、我が説明すれば可能ではないのか?』
「確かに可能だけど、逆に君に対しての不信感が現れる。それだけは避けたいだろう?何せ君の事を初めて肯定してくれた存在なのだからね」
『それよりも、元の場所に戻らないと、あっちの世界がこわれるだろ?』
「おっと、そうだった。それじゃあ乱楼鬼。これからの事楽しみにしてるよ」
黒兎はくすくすとした笑いを残しながら、虚空へと消え去った。