「…………………………………………………」
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時田空はゆっくりとソファに体重を預けて天井を見上げた。
客観的な見方をするならここで彼女を見捨てるというのが正しいのだろうとは時田空にも分かっていた。
強いられて嫌々やるのではない。
むしろ望んでそうしようというのだから止める義理はない。
ましてや、安部明葉と時田空は今日会ったばかりの赤の他人である。
個人の事情に嘴を突っ込める仲ではない。
いっそ狂気じみた中学生のプライドなんか付き合わずそのまま仙台に帰って勇者の話を断れば良いだけだ。
分かってはいる。
分かっている。
けれども――
どうしてもこの少女を見捨てる気にはなれなかった。
時田空は見る。
いっそ痛々しいまでに白い肌を。
いっそ毒々しいまでに黒い髪を。
その異形の姿を――見る。
可愛いなんてとても言えない、気持ち悪いと言っても過言ではないその姿は――どうしてだかとても美しく思えた。
「……………………………………………………はあ」
また、これか。
時田空はガックリと項垂れた。
項垂れると座高の関係で頭はテーブルの下に入ってしまうのだがそんなことはどうでもよかった。
百四十六センチ。という高一男子としては低すぎるそれが時田空の身長だ。
そのせいなのか何なのか時田空は背の高い女に弱かった。
正確には背の高い痩せ気味の不幸そうな女に弱かった。
ちょうど目の前にいる中学生のような。
何だかとても守ってやりたくなってしまうのだ。
実際、それで何度となくひどい目にあったし、そのせいで時田空は年の割りに強固な女性不信の持ち主であったが――それでも。
こうして目の前に座られると、助けてやりたくなってしまう。
最早呪いと言っても良い。
「……とりあえず明葉ちゃんちいこうか。いつまでもここにいる訳にはいかないし、源氏様にも話を聞きたいし」
「……そうですね。学校は大丈夫なんですか?」
「明日はサボるよ。明日の昼しか新幹線のチケット取れなかったし」
そう言って空は立ち上がる。
「……なんでこう厄介なことになる訳?」
それは厄介な女が好きな自分が悪いのだが――たまにはぼやいたってバチは当たらないだろう。
空は静かにため息をついた。
恋愛フラグが立ちました。




