『一分後。再召喚行います。準備してください』
学術科学都市編スタートです。
六月二十四日。日曜日。午後三時。学術科学都市に明葉はいた。黒光りする銃口がいくつもこちらを狙っている。
室内だけではない。屋外からもライフルの銃口が明葉の頭蓋を捉えている。
話し合おうという態度ではないが公爵曰く今日は大分ましなのだそうだ。
謁見の間。魔法鉄鋼王国とは大分雰囲気が違う。例えるなら監獄の面会室のような。
無機質な部屋。鉄格子と固定された家具。
江藤龍は別室で拘束されている。
召喚に支障はないらしいが人道的なやり口ではない。
正直、なんというか。
そこまで怯えなくてもと思わなくもない。
怯え。
そう、怯えだ。
魔法使いが怖い。
魔法が怖い。
案外、一般的な勇者界の要人が魔法使いと対面したときこういう反応を返すのかもしれない。
魔法を捨てた学術科学都市。
高き城壁の内側で鎖国する彼らはどこまでも勇者界に近づかんとしたのだろう。
それは確かに成功していると言えた。
「ようこそお出でくださいました。私が学術科学都市市長クラウディオ・ベガと申します」
礼儀正しいと言うよりは機械的に市長は言う。
ふと。
この黒光りする銃口の全てが市長に向いたらどうなるだろうか、と思った。
「こちらこそお招きいただきありがとうございます。魔法鉄鋼王国先端技術大臣ディルク・シュンペイターです。これなるものは我が国の勇者安倍明葉。器の者は江藤命。よろしくお願いいたします」
明葉は黙って頭を下げる。
今日は明葉の首にはあの重苦しい藍色真珠はない。
勇者としてここにいる証だ。
その事実に微かに心が浮き立って顔をあげた。
全てが一瞬だった。
クラウディオの手に黒光りする拳銃が握られていたこと。
乾いた破裂音が部屋中に響いたこと。
同時に四方八方からもっと重い爆発音が響いたこと。
全てが一瞬の内に起き。
気がつけば明葉は自宅のリビングに横たわっていた。
いつも明葉が布団にくるまって眠る隅っこではない。
明葉が数えるほどしか座った事のないテレビの前のソファーの上。
異世界よりも異世界な触り心地に明葉が驚嘆していると頭の中にウインドウが開く。
『一分後。再召喚行います。準備してください』
そうか、戻されたのかとそこで思考が追い付く。
そうなると結論は一つしかない。
撃たれたのだ。
学術科学都市に。
あの銃口はフェイクでもハッタリでもなんでもなく、明葉を撃つために用意されていたのだ。
一分でそこまで考えて。
明葉は再び異世界へと旅立った。
いきなりの銃撃。生き残れるか?




