「……相変わらずの不死身っぷりですね」
四月二十五日。一日で終わった戦争の始まり
魔法鉄鋼王国第一宮廷魔法師江藤蓮。
神い聖王国法王フランシスコ――又の名を鋏要らずのアラン。
七国最新最高の魔法使いと。
七国最大最強の魔法使い。
一体どちらが強いのか。
最先端の技術を最高効率で操る江藤蓮か。
最大火力を誇り七国最強の名を欲しいままにしてきたアラン・シセか。
幾度となく議論されてきたその問題に決着をつける日が遂にやって来る。
四月二十五日。
国境を越えようとしていた魔法鉄鋼王国軍に報せが走る。
――『法王、親征』
その報せは魔法鉄鋼王国王城に残っていた江藤蓮にも届く。
瞬間、蓮は国境へと走る。
魔法で有らん限りに強化された肉体は王城国境間を二時間で走破し――そして戦場に現れた。
既にステージは用意されていた。
両軍の兵士によって描かれた直径四百メートルほどの円。
その中心にその男は立っていた。
いつも通りの白いスーツ。
いつも通りの穏和な微笑み。
なれど、確かにそこにいるのは鋏要らずのアラン・シセ。
その手に光るは針――否。
無数の返しを持ち毒液の虹色にヌラリと光るそれを針とは言えないだろう。
「――お待ちしておりました」
一閃。
八本の『針』がアランの指先より放たれるのと同時。
蓮はアランめがけて駆け出した。
ズオンッ。
踏み込んだ地面が抉れ、蓮の体は宙を駆ける。
飛来する『針』にむしろ飛び込むかのように交錯し、そして駆け抜ける。
『針』は蓮の体を通過した事に気付く事すら出来ずに地に落ちた。
蓮は止まらない。
後ろに流れる赤を。
空いた穴から生じた黒を。
歯牙にもかけず駆け抜けるッ!
勢いそのままに左足を踏み込んでッ!
運動エネルギーの全てを乗せた右ストレートッ!
「遅い」
法王は半歩右に逸れそのまま流れるように『針』を穿ち、引き抜く。
べちゃっ。
湿った音を立てて『針』に絡み付いた肉片が地を染める。
「今朝完成したばかりの最新の致死毒です。抗体も血清もこの世には存在しない……ッ!」
腕を振り抜いたその勢いそのままにぐるりと体を回転させて蓮は拳を振り抜いた。
上体を反らせてそれをギリギリで回避するアラン。
ズンッ!
蓮の拳が地面にぶつかりクレーターのごとく地面が削れる。
冷や汗。
喰らっていたらアランなど粉微塵だ。
「俺に毒は効かん。例え未知の物でもだ」
「……相変わらずの不死身っぷりですね」
一歩。
アランは距離を取る。
懐から取り出したのは――裁ち鋏。
銘は『鋏要らず』。
七国唯一の戦闘用裁ち鋏である。




