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「……頼もしい限りですねえ」

「……想定よりも早かったですね。しかし、早すぎるというほどではない。計画はこのまま続行しますよ」

「イエッサ―」

「ラジャー」

「了解です」

様々なOKサインが部屋のあちこちから上がる。

魔法鉄鋼王国先端技術省執務室。

先端技術大臣ディルク・シュンペイターを支える事務方のいるところだ。

「……頼もしい限りですねえ」

他の省に比べて色物揃いと称される自信の部下を眺めて公爵は一人笑みを浮かべる。

「大臣ー。大八木美穂と新見光の監視は続行で良いすかー」

「続行で。大八木美穂さんとはコンタクト取れるようなら取っちゃってください」

「了解ー」

そう聞いたのは平民出身の部下。

本来なら口をきくだけでも面倒な手続きが必要だが、ここではそんなもの一切関係ない。

魔法鉄鋼王国で最も身分に関係ない場所。それが財務省と先端技術省である。

理由は簡単で激務だからである。余計な遠慮が命取りになるほどの圧倒的仕事量。身分制度はその物理的質量の前に膝をつく。

ここで一番偉いのは身分の高い者ではない。仕事の出来るものだ。

「とはいえ意外は意外でしたね。てっきりこちら側の事について聞いてくるかと思いましたが」

二人の会話は安部明葉の事に終始していた。

魔法鉄鋼王国現勇者の少女の話題に。

「売り出してみたい――ですか。確かに彼女は魅力的ですが――それはいただけませんね」

「ええ、売り出すのは我々魔法鉄鋼王国です」

公爵の独り言に答えたのは勇者召喚課課長。

だが、公爵はそれを悠然と否定する。

「そう簡単に大衆をコントロールできると思ってはいけませんよ。誰であろうと。まして彼女に売り込む意思がないなら尚更です」

「しかし、逆に言えば」

「彼女に売り込む意思があるなら」

「手伝うのに遠慮はいらない――ですね?」

分かってますよと笑う部下たち。この間も作業の手を止めないのは流石である。

それはそうと、と公爵は思考を元に戻す。

新見光はなぜ魔法鉄鋼王国についてなにも聞かなかったのか。

ただ単に神聖王国側を重視したともとれるが。

「あるいは――過去に何があったかよりも今彼女が信頼できるのかどうかが重要ということでしょうか」

「それに関してご報告が」

「新見光――ここにいたって興信所に身辺調査依頼を出しております」

「対象はもちろん安部明葉で」

報告が矢のように飛んでくる。

それをいなして公爵は続ける。

「ここにいたって、と言うのが重要なのでしょうね。大八木美穂との接触が新見光の異世界観に影響を与えたと見るべきでしょう」

子供たちの語る空想世界が現実味を増した。

大人を巻き込んで。

看過できないほどに。

降りかかる火の粉さえ払えば良いというスタンスに限界を感じたのだろう。

「山崎光治氏とのアポイントメントは金曜の正午です。昼食をご一緒するとのことです」

「仁ノ宮愛は大会に向けて集中特訓中です」

報告を聞きながら、公爵は一つ頷いた。

「――それで、我らが勇者様は今何をしてらっしゃいます?」


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