「好きにしても――構わないんですよね?」
短めです。
「さて、来週は数学をやりますよ。日曜日はまた人に会ってもらいますが土曜日は過去問です。過去問零点なら無報酬で面会してもらいますから」
あっさりと話題を転換させて公爵は言った。
鬼である。悪魔である。
受験の鬼がそこにいた。
「さあ、ついにいよいよ彼らが動き出しましたよ」
クスクスと可笑しくてならないというように公爵は笑った。
追い詰めた獲物が決死の覚悟で繰り出した反撃をさらりとかわしてとどめを刺そうという笑み。
「学術科学都市――ついに彼らがあなたとの面会を求めてきました」
「好きにしても――構わないんですよね?」
明葉の質問に――
「構いません」
公爵は言い切った。
「何を言おうと切って捨てるというならそれも良いでしょう。我々と彼らの架け橋になるというならそれも良いでしょう。いっそのこと我々を切り捨てて向こうにつくというのでも構いません。あなたの自由になさって下さい」
公爵はいっそ慇懃無礼に頭を下げた。
お前ごとき歯牙にもかけぬと言わんばかり。
代わりはいくらでもいる――のだろう。
「……そこで報酬を使ってしまっても――構わない、ですか?」
「構いません」
公爵は余裕たっぷりに頭を上げた。
「あなたが何を望もうともできる限り叶えましょう。それが学術科学都市に利するものであっても構いません」
ぞくりと。
背筋が震えるほどの余裕だった。
飲み込まれそうな感覚が明葉を襲う。
ぎりりと歯を食い縛る。
負ける、ものか。
自由ごときに、負けるものか!
「分かりました。お引き受けしましょう」
動揺を飲み込んで明葉は宣言する。
これしきのことで怯んではいられなかった。
この場に光さんがいたらきっと即座に「やれ」と言ったから。
「結構。有意義な会談になることを祈ってますよ。ああそれと」
受験の鬼はウインクして言った。
「――数学も忘れずに」
これにて『冒険者編』終了です。
冒険者たちは何を見つけてくるのでしょうか?




