「……そりゃ探検家とか測量士とかじゃねえのか」
「冒険者、ねえ……。胡散臭えな」
「ですよねえ……。」
六月十七日。日曜日。正午。光さんとの定期連絡の時間。
「いったいなんなんだ。その冒険者とやらは」
「国が七つあるわけじゃないですか。その辺りから東にずーっと行くと大海原に出るんだそうです。で西にずーっと行くと険しい山脈があるんだそうです。その海と山に囲まれたエリアが七国圏内。冒険者とはその外側の探索と測量を行う人々だそうです」
「……そりゃ探検家とか測量士とかじゃねえのか」
「勇者がいるなら冒険者だろうと誰かが言ったらしいです」
雰囲気優先です。
そう言うと光さんはわざとらしいほど大きなため息をついた。
「で? その冒険者が何の用だ」
なげやりな心底めんどくさそうな声。
しかし、そうも言ってられないのである。
「真面目な話になるんですが、前に仁ノ宮さんが自分の父親は向こうの人かもしれないっていってたじゃないですか」
「……言ってたな」
「現状、物質に世界を越えさせる技術を持っている者は確認されていません。組織個人を問わずです。ましてお父上が現れたという二十数年前にはまずいなかっただろうと」
「……つまり?」
グレイのレンズの奥の鋭い眼光が見えた気がした。
「あるのではないかと。海と山を越えたその向こうに、七国がまだ知らない文明が。今回の一行はそれを調査するための調査団だそうです」
「……へえ」
「世界の大きさというのは地球とほぼ変わらないだろうと測量されています。一方七国圏内と呼ばれるエリアは日本列島とほぼ同じ広さということも測量されています。つまり向こうの世界のほとんどがなにもわかっていない白紙の大地なのです」
「そこに何があっても不思議じゃねえわけか」
光さんは愉快そうに笑う。
「異世界というならばそれこそが、と言っていました。公爵が」
我々は多くの物と出会うでしょう。
多くのいさかいが起こるでしょう。
多くのものを失い多くの人が傷つき、しかしそれでも。
出会わないという選択肢はないのです。
侵略するのかされるのかそれすらわかりませんが、それでも。
我々は出会わなければならない。
同じ世界に住むものとしての義務です。
そう、公爵は言っていた。
明葉には意味はさっぱり分からなかったけど、覚悟のほどは伝わってきた。
「……なるほどねえ。で、今日会うのはその調査団の責任者か?」
「だそうです。四人とも北限国家の有名な冒険者だそうで」
魔法界に冒険者はいても冒険者ギルドはない。冒険者は国家や組織と契約してスポンサーになってもらい冒険の旅に出かけるのだ。その辺こちらの大航海時代に近いものがある。
そう説明して明葉は続ける。
「今回はゴールドさんがスポンサーです。北限国家の冒険者にして金鉱を掘り当てた大富豪らしいのです。その方と七国が共同出資して調査団を組織したというところらしいです。」
「は、文明なんて簡単に見つかると思ってんのかねえ?」
「今回はあくまでも山脈の向こうへのルートを確立するための基礎調査だそうです。本格的な調査はそのあととのことです」
「ふうん……」
光さんはそう言って黙りこんだ。
考え込んでいるのだろう。ならば明葉は待つだけである。
「……冒険者の親玉と話すんだよな?」
「そうです」
それが今回の仕事である。
「……ふうん。なら、一つだけ忠告をしておいてやるよ――」
七国の歴史は勇者召喚と共にありました。
三十年前初めて勇者が召喚された時、初めて国家として産声を上げたと言っても過言ではありません。
歴史も世界もまだまだ当人たちですら分からないことだらけです




