「ああ、ありますよね雰囲気」
「え、ちょマジで劇団小宇宙行くの」
「マジ。ま、そっから先は分からないけどね。一応使えそうな女子中学生見つけたら連れてきてとは言われてたし」
「良かったですね! 出世の大チャンスですよ!」
水曜日。放課後。白いバンの中。
仁ノ宮愛、遠藤雪菜、安部明葉。
プチ女子会である。
あるいは劇団小宇宙への道行きであった。
「……あんたいつのまに仁ノ宮さんと知り合ったのよ?」
「テレビ局で声をかけられまして」
まさか、異世界で出会ったとは言えない。ま、似たようなものだしどっちでもよかろう。
「面白い子がいると思ってね。ちょっと唾つけとこうかと」
「面白い、ですか……」
「そう。特にこう……髪がね」
「髪ですか!」
「ほら、私って髪キャラじゃない。こう、第二第三の髪キャラの卵を見るとそれはスルー出来ないって言うか」
「……」
明葉は一応女の子の嗜みとして髪の毛には気を使っている。シャンプーはノンシリコン、トリートメントは洗い流す方流さない方両方、洗ったらすぐに乾かし、二種類のブラシでブラッシングである。
日本人形か幽霊のようで不気味だと大変不評だが明葉なりのこだわりである。
「もう、この世のものではないかのようじゃない? 日本髪とかにしたら江戸時代の幽霊よね」
安部明葉の容姿に対する最大限の誉め言葉として江戸時代だったら美人というのがある。
長くて重苦しい緑の黒髪といい、きめ細やかで病的なほど白い肌。一重であまり大きくない目、薄くてあまり大きくない口。寸胴で出るとこ出てない引っ込むとこ引っ込んでない和服体型。
間違っても今風の容姿ではない。
「顔はね化粧でどうとでもなるし。このぐらいのほうが逆にウケるっていうか」
このぐらい。どのぐらいであろうか。
明葉としては自分の容姿は普通の域をでないものだと考えているのだが。
それ以上、いやそれ以下だと言いたいのであろうか。
「……インパクトありますよね」
「あるわよねえ」
あんのかい。
「それでね、ちょっと話聞いたら写真記憶があるって言うじゃない? こりゃ雰囲気あるわ~って私感心しちゃって」
「ああ、ありますよね雰囲気」
……この褒めてるんだかバカにしてるんだかよく分からない会話はどこまで続くんだろうか。
そうですかありますか雰囲気。
「もしかしたら掘り出し物かもとおもって唾つけちゃった。仲良くしてあげてね」
「はい! もちろんです!」
と、そこで。
バンが止まる。
「――着いたわね」
「はい」
「私にしてあげられるのはここまで。あとは自分で掴み取りなさい」
「はい!」
そう言って遠藤さんが勢いよくバンを降りていって、
――劇団小宇宙の緊急オーディションが始まる。
明葉江戸時代美人です。
今時ギャルの格好するとものすごい違和感が……




