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「……そういう所なのかもね。勇者の資質というのは」

「仁ノ宮さんが魔法鉄鋼王国に来るには仁ノ宮さんの方からやって来る必要があるそうです」

「そうなのね……」

召喚終わって午後七時。

メールではない。通話だった。

六時に召喚終わって速攻で「戻りました」とメールして。

その返事は「七時に電話して」だった。

慌てて夕飯を済ませて聞いてきた内容をまとめて七時きっかりに電話して。

緊張した声で話す明葉の言葉に仁ノ宮さんは真剣に耳を傾けていた。

「魔法鉄鋼王国が言うにはその際は私にも同席して欲しいと」

「ふうん? 随分とまあ、信用されているのね」

「そうですか?」

そうなのだろうか? そんな感じはしなかったけど。

「私が何を話そうが裏切ることはないってことでしょ?」

「……うーん。裏切ったところで大したことはないってことじゃないですか? 私あんまり役に立ってないんで。現状唯一の業務は仁ノ宮さんとの連絡係だし、そっちからどうせ情報は漏れるんだからみたいな……」

「そんなことないわよ」

仁ノ宮さんは、断言した。

「勇者召喚だって只ではないのよ? わざわざコストを割いて召喚してるのだからその価値があると思われているはずよ。……というか、こうして話していても『良い勇者』だと分かるしね」

「どこがですか?」

心底疑問な明葉に仁ノ宮さんはころころと笑った。

「魔法の話をしないでしょう? 普通なら私を質問攻めにしているか、それどころか自分も魔法が使えるんじゃないかって騒ぎ出すわよ」

「……当たり前でしょう? 仁ノ宮さんにできることが私にも出来るなんてそんな思い上がりも甚だしい」

仁ノ宮愛は特別な主人公だが安部明葉は凡庸な脇役である。そしてそんな自虐以前に例え世界の誰も魔法を使えなかったんだとしても彼女だけは使えそうな、そんなカリスマが仁ノ宮愛という少女にはあるのだ。

安部明葉とは違う。

クスクスと面白そうに仁ノ宮さんは笑った。

「思い上がるところでしょう。普通は。なにせ異世界で勇者なのだから。あなたは選ばれたのだから。魔法だってなんだって使えると思うべきでしょう?」

「思いませんよ」

それは即答できた。

例え世界の誰もが魔法を使えるとしても自分だけは魔法が使えない自信まではなかったが、多分そこそこ下手な方に入る自信が明葉にはあった。

異世界に召喚されて勇者だなんだと言われたところでそれは変わらない。

安部明葉とは勇者という名の脇役である。

そんな確信が明葉にはあった。

「……そういう所なのかもね。勇者の資質というのは」

「どういう所ですか?」

「何も成していないというのは大きな失敗がないということでもあるのではないかしら? 意外と勇者の評価というのは何を成したかではなく何をしなかったかで決まる気がするわ」

そう言ってクスリと彼女は笑みを漏らした。

「……そうね。良ければ同席して貰おうかしら」

「良いんですか?」

「あなたがいれば向こうも適当なことは言えないでしょう。その程度にはあなたを評価しているはずだと私は判断する」

自信をもって仁ノ宮愛は断言した。

どこからそんな自信が湧いてくるのだろうか。

明葉にはさっぱり分からなかった。

「それと火曜日の件、私も同席するから。そのつもりでね」

「分かりました」

まあ、そう来るだろう。

「目立たない場所確保しておくから。じゃーね」

そう言って通話は切れた。

なんだろう。

なんでそんなに明葉のことを高く評価するのだろうか。

明葉にはよく分からなかった。

ふるふる。

軽く頭をふって思考を切り替える。かつて公爵がしていた。カッコ良さそうだったので真似してみた。

時刻は午後八時。

魔法鉄鋼王国との通信の時間である。


明葉の自己評価は低いです。

もうちょっと思い上がっても良いのですが……。

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