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「明葉さんはどうします? 同席しますか?」

日曜。午後十二時半。勇者召喚まであと二時間半。

そこでなんと仁ノ宮さんからのメールである。

まさか、気付かれたのかと急いで開けてみると、

「この件は私に任せてって言ったよね。何こそこそメールしてんの?」

ばっちりバレていた。

どうして、だろうか。

彼と彼女はメールのチェックをし合う仲なのか。

それとも他の女とのやり取りと見逃さない女の勘か。

と、よく見ればアドレスが新見さんのものである。

どうやら端末ごとひったくったらしい。

仁ノ宮さんかなりお怒りである。

ど、どうしよう。

と、焦ってはみたものの。

こういうとき上手く誤魔化すというスキルは明葉にはなかった。

空気も読めない安部明葉である。

洗いざらいぶちまけるしかなかった。

魔法鉄鋼王国に依頼されたこと。

新見さんが魔法を使えるかどうか調べたいこと。

仁ノ宮さんについてもっとよく知りたいこと。

簡潔にまとめて。

五回読み返して。

送信した。

返信は一分もしないうちに来た。

速すぎである。

ピアニストの指先恐るべしである。

さて、仁ノ宮さんはどんなにか怒っていることだろう。

ヒヤヒヤしながらメールを開ける。

「私が魔法鉄鋼王国に行くことってできる?」

はて?

怒ってないのかな?

しかし、どっちにしろ明葉には答えられない質問だ。

なので、そのように答える。

もちろん最後には「今日三時から召喚なのでその時に聞いておきます」と付け加えるのを忘れずに。

送信。

即返信。

ピアニストスゴい。

「帰ってきたら即メールして。時間は来週の日曜三時で時間作るって言っといて」

「了解しました」

そういうことになった。


「そういう訳で。仁ノ宮さんが魔法鉄鋼王国に来るのは可能ですか?」

「……急展開ですね」

日曜午後三時。魔法鉄鋼王国先端技術大臣室。

いつもの場所、いつものメンバーである。

「……技術的には可能でしょうな。後は政治的な話になってしまうわけですが……」

「難しいですか?」

うーんと公爵は腕を組んで唸った。

「この間までだったらそれは不可能だったのですが。和解、してしまったのですよね。その上で勇者が望んでいるとなれば。勇者の望みというのは基本的に叶える物ですから」

「そうですか……」

そういえば、明葉も大分無茶苦茶な願いを叶えてもらっていた。今や王妹殿下である。

「出来れば、仁ノ宮さんの方からやって来たという形を取りたいんですよね。こちらから召喚したという形ではなくて。逆に言えばその形であれば可能、でしょうね」

あくまでも形の上だけの問題なのだけれど。そうした方が良いと言うのは明葉にも分かった。

「……考えてみれば別の視点からの意見が欲しいのは仁ノ宮愛も同じですか。さすが情報化社会に生きる勇者です。情報の価値が分かるからその辺容赦しませんね」

公爵のため息が重く空間にのしかかる。

「悪いことばかりでもないですが、それでもしてやられた感が否めませんねえ。最近こんなことばっかりで……」

困ったことです。

そう言って公爵は切り替えるように首を振った。

「明葉さんはどうします? 同席しますか?」

「出来るんですか!?」

てっきり召喚できるのは一人きりで仁ノ宮さんだけが召喚されるのだと思っていたのだけれど。

「我々は魔法技術の先進国魔法鉄鋼王国ですよ。複数人数の召喚ぐらい出来ます。流石にその辺は仁ノ宮さんの希望が優先されますが」

「……良いんですか?」

魔法鉄鋼王国の都合を考えるならば明葉は無知であればあるほど方が扱いやすいだろう。

明葉が知恵をつけるのを公爵は望んでいないと思ったのだけど。

しかし、公爵は言う。

「あなたと仁ノ宮愛が出会ってしまった以上、仁ノ宮愛経由で善からぬ情報を植え付けられる方が問題としては深刻です。出来れば同席していただきたい」

除け者にしてもどうせ後でメールするでしょう?

公爵はそう言って微笑んだ。

穏やかな優しい笑顔に見えるけど流石に明葉は騙されない。

今のは公爵の手で明葉が手にする情報をコントロールしたいと言う意味なのだ。

けれども。

それでも、公爵にとって魔法鉄鋼王国側にとってこれが一種の賭けであることもまた理解できた。

この会見にシナリオはない。全編アドリブである。

何か明葉にとって不都合なことを聞かれるかもしれないし、下手をすれば明葉は勇者を辞めたいと言うかもしれなかった。

明葉に確たる実績はない。まだ、なにも成果をあげていない今の状態で辞められたら単純に持ち出しである。

そう言った意味ではこれが最大限の誠意と明葉は考える。

「分かりました。同席します」

明葉に人を見る目は無いけれども。

それでも、公爵はそれなりに誠意を持って接してくれていると思うのだ。

多分、それは安部明葉個人に対するものというより勇者召喚そのものに対する誠意なのだろうけど。

三十年。明葉の人生の二倍以上。その時を勇者召喚と共に過ごしてきたその内心を明葉には推し測ることなんてできないけれども。

それでも。

伝わってくるものはあるのだ。

「分かりました。では、そういうことで」


女の勘は鋭いのです。

愛は特に勘が鋭い。

隠してもすぐにばれてしまいます

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