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「失礼します。お時間です」

「学術科学都市? ああ、なんか私のこと嫌ってるみたいね」

「ご、ご存知でしたか……」

しどろもどろの明葉の説明を仁ノ宮さんは根気良く聞いてくれた。

それでころっと『良い人』認定してしまう明葉はお世辞にも利口でない。

「……それにしても」

ルームサービスで頼んだフレッシュオレンジジュースで喉を潤して仁ノ宮さんは首を傾げた。

「あのアイドルオタクが動くとはね。しかも、あなたに私のことを頼むとか……。つい最近まで戦争してたんでしょうが」

「アイドルオタク、ですか」

はて。

誰のことだろう。

「ああ、法王ってアイドルグループ作るのが夢の人だから。『浜辺でビキニの女の子が踊っているなら戦争とかどうでも良いと思いませんか?』だの『絶対領域は譲れません』だの……。和平会談の時私が着てったヤツは全部あいつの手配だし。外面に騙されちゃダメよ? 男はみんな狼なんだから」

「そ、そうなんですか」

仁ノ宮さんは吐き捨てるように言う。

ふうん。

意外だ。

似た属性の二人だと思ったのだけど。

それだけに折り合わないのかもしれない。

「……まあ、それだけ本気ってことか。あなたアイドルってタイプじゃないし」

アレが目をつけるとも思えない。

それだけ呟いて。

仁ノ宮さんは窓の方を見た。

盗撮防止にカーテンが下ろされた窓。

見ても面白くもないだろうそれを見つめる瞳はやけに真剣で。

綺麗、だと思った。

――どれくらいそうしていたのか。

不意に仁ノ宮さんは明葉を見た。

いつの間にかジュースの氷はすっかり溶けてしまっていて。

すっかり薄くなってしまったそれを構わず一口飲んで。

「――ごめんなさい。こちらから巻き込んで申し訳ないのだけどこの件は私に任せてもらえないかしら」

天才仁ノ宮愛は凡人安部明葉に頭を下げた。

――息が、止まるかと思った。


何も言えなかった。

ただ、頭を下げる天才を見つめていた。


沈黙を打ち破ったのはノックの音。

「失礼します。お時間です」

黒衣の青年の声だった。


まあ、アイドルオタクというより実態は服飾オタクと呼んだ方が正確なんですが……。

そんなことは知ったこっちゃない仁ノ宮さん。

「アイツはアイドルオタクで十分よ!!」

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