「――これは、全くの個人的意見ですが」
穴があったら入りたいとはこの事だった。
調子に乗って喋り倒した自分を殴り殺したい。
というか。
せっかく隠してもらってるのに何を叫んでいるのか。
見つかったらどうしよう。
「……大丈夫です。運良く向こうでもキャーキャー言ってるようで」
様子をうかがっていた新見さんが言う。
そして軽くため息をついて明葉の頭に手をのせた。
「こっちは一応隠れているので。あまり騒がしくしないでいただけると」
「……すみません」
うん。全くもってごもっとも。
それに。
「失礼なことを言いました」
「失礼と言うか甘ったるいですよね。」
ぺこりと下げた明葉の頭に容赦のない一言が突き刺さった。
自覚はある。そこまで愚かではない。
それだけに、痛い。
明葉は天才になるための努力を放棄して生きてきた。それはどうしようもない事実だ。
それを認めてくれるような世界だったらよかったのだけど、あいにく世界はそこまで優しくなかった。
図星を突かれた。だからキレた。最悪である。
「まあ、嫌いではないですよ。甘ったるいだけに真実だと思いますし。努力しないことを肯定する――愛に欠けているのはそういうものなのでしょう」
弱肉強食の芸能界で十年生き抜いてきた少女だ。
蹴落としてきた人数も百や二百ではないだろう。
才能と努力と政治的なあれこれだけの世界。
才能のない者、努力の足りない者のことなど顧みる余裕などなく。
傷だらけの女王は戦って戦って。
紅い髪と十本の指だけを頼りに。
血まみれの道を切り開いてきたのだろう。
仁ノ宮愛に親はいない。
父親は生まれる前に、母親は彼女が十才の時に死んでしまった。
天涯孤独の大手事務所所属でもないフリーランスの彼女が今の地位を築くためにどれだけ頑張ってきたのか。
正しくなにも努力してこなかった明葉とは正反対。
だけど、新見さんは言うのだ。
「似た者同士なんでしょうね。愛は愛でまだまだ甘い」
努力すれば、才能があれば、成功できる――なんて甘過ぎる。
そう言って新見さんはゴミを纏めて立ち上がった。
「収録終わり次第仁ノ宮をこちらに連れてきますので。それまで大人しくしておいてくださいね」
「は、はい」
「それではよろしくお願いいたします」
そう言って扉に手をかけた新見さんはそこでふと振り返った。
「――これは、全くの個人的意見ですが」
グレイのレンズの奥の瞳が愉快そうに輝いて。
挑発するような笑みが浮かんだ。
「それでも俺はお前が努力する所が見てみたい。お前が『天才』になる瞬間が」
バタン。
今度こそ扉は閉じられた。
明葉の好感度がアップしました!!
が、光さんはそんなこと知ったこっちゃないのです




