「なりたくないか。天才に」
主人公明葉のチート能力が明らかになります。
高校受験に役立つこと必至です。
写真記憶。それが強くもなければ賢くもない空気も読めなきゃ人を見る目もない安部明葉の唯一の取り柄である。
見たものをそのままに記憶するその才能は知識の量ではなくその応用こそを真価とする現代人にとってはあまり意味がない。
けれど勇者としては。
勇者召喚によって界を行き来できるのは精神だけ。
つまり持ち込める記憶媒体が己の頭脳ただひとつに限られる。
その条件下では安部明葉は賢者の頭脳を持つ史上最高の勇者なのだ。
「ご存知でしたか」
「愛が神聖王国で聞き出してきました。向こうの勇者は天才だと」
「天才じゃないですよ」
そう。天才じゃない。
明葉は覚えることができるだけだ。
写真のように記憶した知識の百分の一すら扱えない。
そんなものスマホと何が違うのか。
むしろクラウド化できる分だけ向こうのほうが上である。
明葉など所詮ボスキャラも倒せない雑魚キャラだ。
「……そうですか」
「そうです」
新見さんはサンドイッチの最後の一口を口に放り込んで暫し黙る。
大人の男は食べてるときに口を開かないのだ。
「……『勇者とは選ばれたものではない――選んだ者だ』。 俺は天才もそうだと思うけどね」
いっそ投げやりにそう言ってアイスティーを飲み干す新見さん。
その視線は最早見る価値がないと言うように明葉から外されている。
「なりたくないか。天才に」
ひどくひどくツマラナイものを見たと言うような冷たい声音。
それはまるで箱の中で対峙したあの天才のような。
……ふざけんなよな。
「……天才にしか価値はありませんか。選んだ誰かにしか価値はありませんか。あなたの大切な天才さんはそんな人だったんですか。例え選ばれなくとも選ばなくともあなたはついてきたきたんじゃないんですか!」
選ばない誰かに価値がないというなら、選んだ誰かにも価値はないだろう。
ああ、分かっているこんなのは屁理屈だ。
中学生らしい空理空論だ。
でも。
譲れない。
天才じゃなくても。
綺麗じゃなくとも。
賢くなくとも。
強くなくとも。
無能でも。
非力でも。
どうしようもなくとも。
それが悪でも。
それでも。
――生きてていいはずだろう。
「天才としか付き合いたくありませんか。頑張ってる人としか付き合いたくありませんか。前を見てる人としか付き合いたくありませんか! ふざけないでください。人権ってそんなあまっちょろいもんじゃないでしょう!」
才能があって綺麗で前向きで努力家で強くて賢くて健気で。
そんなヤツに権利があるのは当たり前だろう。
そうじゃないから、それは宣言されたんだ。
不自然で人工的な自然権として。
そんな人権の怖さもわからないのか。
「怠惰で惰弱で後ろ向きで非才で非力で無能で暗愚で卑小で脆弱な世界では生きたくありませんか! そんな世界あるわけないでしょう! 仁ノ宮愛はその程度ですか!」
新見光はその程度か!
天才を美人を賢人を有力者を大人物を大切にすることなんか誰にだってできるだろうが!
叫んで。
肩で息をして。
睨み付けた。
「ああ……」
新見さんは。
明葉の剣幕にあっけにとられたように固まっていた新見さんは。
そこで何か納得したように一つ頷いた。
「逆ギレか」
ばっさりだった。
そして、図星を刺したイケメンの言葉に明葉逆ギレです。
言ってること無茶苦茶ですね。
そりゃだれだって天才と付き合いたいに決まってる(苦笑)




