「新見さんは私のことどう思います?」
「チキンとビーフならどっちが良いですか」
「チキンでお願いします。……あー、またクリアできなかった」
午後六時。
夕食である。
夕食として新見さんが持ってきたのはサンドイッチチェーンのサンドイッチとペットボトルのアイスティーである。
明葉はゲーム中であった。
ボスキャラが倒せないのである。
安部明葉。ゲームそんなに強くない。
「貸してください」
ひょいと長い指がコントローラーを明葉から取り上げた。
「こいつは目が弱点なんですよ。目を攻撃すると怯みますからその隙を狙って……」
新見さんは巧みなコントローラー捌きを披露して明葉が倒せなかったボスキャラを瞬く間に倒してしまった。そのままセーブしてコントローラーを脇に置く。
「ご飯にしましょうか」
渡されるチキンサンド。
見上げる明葉を見下ろして。
新見さんはビーフサンド片手に薄く笑った。
「新見さんもここで?」
「マネージャーなんてそんなものです」
マネージャーと書いて苦労人と読むらしい。
新見さんは長い指でべりべりと包装を破いて、いっそお行儀悪くかぶりついた。
うわあ………。
格好いいなあ。
意外に肌が綺麗な所とか、無造作に固めた髪が染めてないそのまんまの所とか、メタリックな腕時計の文字盤が真っ黒なとことか、コントローラー持ったら目の色が変わるところとか色々含めてなんかこうど真ん中ストレートであった。
「新見さんは私のことどう思います?」
「はい?」
大暴走であった。
ほぼ初対面の人に何をいってるんだ。
誤魔化せ! なんかいい感じに誤魔化せ!
エマジェーンシーサインを受け取った明葉の頭脳が賢くないなりに大回転する。
………………………これだああああ!
「その、デビューできるのかってことです。新見さんから見て私売れるように見えますか?」
安部明葉全力である。必死である。
でも、多分新見さんは気付いてる。空気読めなくても分かる。だって明葉顔真っ赤だ。気づかないわけがない。気づいていてスルーしてくれている。
もう、優しいんだかズルいんだかなんなんだか。
大人って大人って………っもう!
「……三割といったところでしょうかね」
新見さんは中学生のおたおたをスルーしてペットボトルの蓋を開けた。
大人の男は慌てたりしないのだ。
中学生とは格が違うのである。
「三割……というと?」
「売れる確率、の概算ということです。まあ、勘ですが」
三割。野球で三割打てたらエースである。バスケでシュート率三割ならベンチだろう。消費税が三割だったらかなり困る。相続税三割だったら結構な財産家だ。
つまり………どういうことだろう?
「顔はまあ、メイクで誤魔化せますし。後はトークを磨けばどうにか」
「トーク、ですか」
さっぱり自信がない。
「多分二択だと思いますよ。全く売れないか、時の人になるか」
つまり、時の人になる確率三割。
おお、結構高いのではないだろうか。
「逆に言えば貴女の時代を創るつもりでいかなければ全く売れないでしょう。黙っていても売れるタイプでは無いですから。時代が貴女を必要とするように持っていく――売ろうとすればそれしかないかと」
「私の時代ですか」
「――一言で言ってしまえば『新クイズ女王安部明葉』による知識系クイズブームの到来。狙うとすればそこしかないでしょう」
安倍明葉、これが初恋です。
貞子だって恋をするんです。
ちなみに光さん27歳。明葉14歳。年の差13歳です。




