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男はツナギを脱いでいた。

腕を引くのは男だった。

薄汚れたツナギに真新しいサッカーチームのキャップ。

ツナギと似合わないそれは、どうも顔を隠すためだけの代物らしく流行りも何もなく目深に被られている。

唯一はっきり見える口元はグシャグシャともはや味のなくなったとおぼしきガムを噛んでいて、それがひどくだらしない。

背は高いだろう。百八十以上はある。江藤蓮と同じくらいか。

不振人物である。

しかし、明葉は大人しく手を引かれていった。

綺麗な手だと思ったからだ。

肉体労働者の手ではない。

遠目には誤魔化すことはできても近づけばすぐ破綻する変装。

ここで、相手が少なくとも明葉には正体をばらすつもりであるらしいことに気がつかないほど明葉はバカではない。

しかも、向かう先はどうやら地下駐車場。

本来なら人気の無さそうなそこは異世界にすら名を轟かす出待ちの穴場スポット。

音楽番組の収録のために多くのミュージシャンが訪れている現在、この近辺では最も人口密度の高い場所であった。

何か良からぬことをされるということもなかろう。

そう楽観的に考えてトコトコと男の後をついていく明葉。

途中。

何度か警備員に呼び止められるものの男の出した身分証によりなんということもなく通り抜け。

たどり着いたのは白いミニバンの前であった。

後部座席の窓ががスモークガラスで中が覗けないようになっている。

男はポケットからキーを取りだし慣れた手つきで後部ドアを開けると明葉を中に押し込んだ。

明葉は特に抵抗するでもなく中に乗り込んだ。

後部座席は折り畳まれフルフラットなスペースが広がっている。

見渡せば何故か液晶テレビとゲーム機が置かれていて見たことない箱に繋がっていた。

外部バッテリー、だろう。

実はあまりゲームとかしたことない明葉が興味津々でゲーム機に手を伸ばすと、助手席のドアが空いた。

思わず居住まいを正して振り返ると――。


男はツナギを脱いでいた。


別に露出狂というわけではありません

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