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「投稿されたメールは全て仁ノ宮愛本人が目を通すとは限りません。」

第三章スタート。

魔法使い仁ノ宮愛はクラシックのピアニストである。

しかし、磨きあげられたピアノの前で大人しくしている少女でもなかった。

弱冠七歳で天才少女として世にでてから十年。

やりたいことは何でもやるんだと言うように多方面で活躍する彼女を悪く言う人も多い。

ポップスを歌う彼女の姿が動画投稿サイトの上位ランキングに表れたこともある。

バラエティー番組にレギュラー出演したこともある。

女優として舞台に立ったこともある。

その度に沸き上がる批判を彼女はいつだってその両手で封じてみせた。

だから、そのブログもなにか難しい音楽論とか新しい境地の構想とかそんなことが書いてあるのだろうと漠然と明葉は思っていた。

まるで違った。

そこにあるのは誰にでも書けるような、どこにでもあるような当たり前の日常で。

例えば朝スクランブルエッグ食べたとか。

道端見つけた野良猫の写真とか。

新しく買ったシルバーのアクセサリーとか。

そんな話がなんの捻りもなく書いてあった。

明葉はそこから何かを読み取れるほど賢くないし空気も読めない。

もしかしたらそういう平凡な日常が彼女にとってかけがえないと言うことかもしれなかった。

もしかしたらあらゆる宣伝を排除することで昨今の音楽情勢に疑問を投げかけているのかもしれなかった。

もしかしたらただ面倒なだけかもしれなかった。

もしかしたら――これが一番ありそうであった――このブログを書いているのは彼女ではないのかもしれなかった。


「お便りはこちらから」

ポップな字体で書かれたメールフォームのその上で。

真っ赤なゴシック体が幻想を切り裂くように並んでいた。


「投稿されたメールは全て仁ノ宮愛本人が目を通すとは限りません。あらかじめ御了承ください」




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