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「我々の都合を勇者界にまで持ち込むのはルール違反だろうと思うのです」

一口に銃と言っても色々ある。

が、学術科学都市は拳銃から狙撃銃、大砲の類いまで幅広く取り揃えていると公爵は言って天を仰いだ。

「……一応、一応聞いておきますがそれらの運用や製造について専門的な知識がある、ないしは調べてこちらに教授する意志があったりはしますか?」

「しません!」

即答である。

即答以外にどうすれば良いと言うのか。

「ですよね……」

公爵もそれは予期していただろう。

明葉からしてみれば学術科学都市にそれを伝えた奴がいること自体ビックリである。

「……確かに神聖王国が銃を手に入れれば七国の覇権を手にすることも不可能ではないですが。しかし、だからといって放置できるような問題では無いはずなのですよね……」

見えない所でなにか手を打っているのか?

裏でこっそり学術科学都市と手を結んでいるのか?

本気で仁ノ宮愛を放置するつもりなのか?

――神聖王国は仁ノ宮愛の殺害を許容するつもりなのか? あるいは仁ノ宮愛が殺害されない確信があるのか?

「……申し訳ございませんね」

ふうっと息を吐いて公爵は言った。

「……何がでしょうか?」

心当たりは色々あるけど。

それでも。

この人が頭を下げるとは思わなかったのだが。

「個人的な意見ですがねー。我々の都合を勇者界にまで持ち込むのはルール違反だろうと思うのです」

「ルール違反、ですか」

そうでしょう?と公爵は言う。

「我々の都合は我々だけのものです。それをあなた方にまで押し付けることはするべきではありません」

あくまであなた方は善意でこちらにやって来てくれているのだから。

それは尊重されなければならないでしょう。

そんな風に公爵は言う。

「……余所者、だからですか」

「余所者だからです」

勘違いをしないでください。

「我々はあなたが余所者だから喚ぶのです。我々と相容れないから喚ぶのです。我々に逆らうから喚ぶのです」

我々の仲間として我々に従順で同じ目標をみて同じ道を歩く。

そんな勇者は願い下げです。

公爵はそう、切って捨てる。

「どれだけ傷ついても、どれだけぶつかられても、どれだけ邪魔されても。それでも、だからこそ見える別の世界の見たいから勇者を喚ぶのです。

相容れないのも。

逆らうのも。

分かり合えないのも。

当たり前でしょう。

あなた方は常識も制度も技術も思想も言語も全く違う世界でずっと生きてきたんです。

そして全く違う世界だからこそ知りたいんです」

違う。

だからこそ、知りたい。

それは明葉の予期していなかった言葉だった。

「その覚悟がないなら初めから喚ばなければ良いんです。我々はあなた方に誠意と善意を期待します。でも、我々と同じ常識や思想を持つことを我々は期待するべきではありません」

だから。

公爵は明葉を見る。

真っ直ぐに、その瞳を。

「あなた方に我々のルールを押し付けるべきでは無い。あなた方に我々の都合を押し付けるべきでは無い。そう私は考えます」


これで第二章終わりになります。ちょっと閑話を入れていよいよ第三章は進路回です!!

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