17400円(税抜き)。
更新再開。
時は――移ろってしまう。
時は――流れてしまう。
異世界とか勇者とかそんなことには関係なく。
無慈悲に。残酷に。
一つの時代を終わらせてしまう。
七月一日。日曜日。午前七時。
朝シャン浴びた仁ノ宮愛の耳に飛び込んできたのは安部明葉の悲痛な叫び声だった。
『仁ノ宮さん……。血が、血が、血が止まらなくて……私、死んじゃうのかなあ……』
スピーカーモードにされたスマートフォンからそんな頼りなげな声が流れる。あの腹撃たれても平気だった少女からは想像もつかない泣きはらしたか弱い声。慌てて光を見ると額に手を当てたまま、処置なしと首を振っている。
止まらない出血。
少女。
ぴんと頭に閃く物があった。
「……あんた、血ってどっから出てるの?」
「……脚」
それきり押し黙ってしまった少女に愛も沈黙を返した。
渋々、少女は白状する。
「……と、脚の間」
つまりは安部明葉十四歳目出度く初経を迎えたと言うことらしい。
それを理解した愛はコンビニで生理用品と生理用ショーツ一式を買って安部明葉宅に急行した。
「明葉!!」
「…………仁ノ宮、さん?」
弱々しい声が聞こえてくるのはバスルームだ微かにシャワーの音も聞こえる。
迷わず入る。光は玄関で待機である。
全裸の少女が水に打たれていた。
薄い体毛。くびれのない腰。膨らみ始めたばかりの胸。棒のような手足。
滑らかな肌と高い背丈が不釣り合いに見えるほど幼児体型である。
「……仁ノ宮さん……私、どうしたら良いのかなあ……」
少女は肩を震わせながら泣きじゃくる。
きゅととりあえず愛はシャワーを止めた。
ぽすっとバスタオルを投げつける。
「――とりあえず、体拭いて着替えなさい。買い物に行くわよ!」
ぽかんとバスタオルを抱える明葉は。
「は、はい!!」と返事をした。
とりあえず手近なところで――ということで。
明葉と愛は最寄りの大型スーパーに来ていた。
一階の薬売場で生理用品が買えて上には様々なファッションブランドが入っている。
まずは一階薬売場。
「とりあえず、夜用と昼用一個づつね。足りなくなったらまた買いに来なさい。昼用はスリムタイプがお勧め」
「は、はい」
「ここは私が払っとくから。じゃ、次行くわよ」
「は、はい」
三階。ランジェリーショップ。
「とりあえず上も見るわよ。トップとアンダー測っておいて」
「かしこまりました」
明葉のTシャツとジーンズは有無を言わせぬ手つきで脱がされ次々にメジャーが当てられていく。
「AAに近いですが……将来を見ればここはAの方がよろしいかと」
「ワイヤーはない方が良いわよねえ?」
「それはもう。このサイズで寄せて上げてなんかしたら肋骨が歪みます」
「うーん。肩紐が見せられるタイプが良いんだよね……」
「それでしたら、こちらでしょうね。パッドはお入れになります?」
「あー、それは流石に無くて良い。とりあえず三着ぐらいある?」
「在庫確認して参ります」
そこでようやっと明葉は自分がつけることになった代物を見た。
色は淡いピンク。幅広な肩紐にピンクのバラがあしらわれチューブトップやキャミソールにも対応している。
カップは全体を覆うタイプで下側に薄くパッドが入っている。
カップの表面は半分ほどが白いレースで覆われ上品な甘さを演出している。
お値段5800円(税抜き)であった。
そこで、明葉は値札を二度見した。
5800円であった。
現状明葉が着けている全ての衣服よりも高いのであった。
「……」
思わず距離を取った。
三着。
17400円(税抜き)。
――なにか一つの時代が終わってしまった音がした。
「じゃ、本題行くわよ。生理用ショーツと普通使いのショーツ探してるんだけど」
明葉の恐る恐るの反対をきっぱりと無視して仁ノ宮さんは言った。
「ローライズタイプになさいます? それとも普通で?」
「とりあえず普通で良いかな。生理用はスポーツ用、夜用、昼用揃えて起きたいし」
「かしこまりました。……そうなるとこちらになりますかね」
「じゃ、ここからここまで全部」
「……申し訳ございません。サイズがあるのがこちらだけとなってしまいまして……」
「じゃ、それで良いわ。三つともちょうだい」
「かしこまりました」
「ふう……ねえ、明葉」
そこで初めて仁ノ宮さんは明葉を見た。
にまーと非常にいたずらっぽい笑顔である。
「――ちょっと冒険してみない?」
「全力でお断りします!!」
明葉は全力で首を振った。
中学二年生ですから結構遅め。
今までノーブラだったわけではありません。
ジュニア用の三着2980円の着てました。
子供時代の終わり――その始まり。




