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「勘違いです!」

「……厄介なこと?」

「それよりあなた時間大丈夫? 紹介した手前問題起こして欲しくないのだけど」

雪菜は慌てて時計を見る。

「う……時間だけど、だけど!」

「ここは私に任せてあなたは帰りなさい。あとでメールしてあげるから」

雪菜は暫く躊躇っていたが意を決したように一礼して、

「明葉のことよろしくお願いいたします!」

そう叫んで、駆け出して行った。

「――で、人払いまでしてどうしたんですか?」

「――話したのね。あの子に」

仁ノ宮さんは髪をかきあげながら言った。

その目は雪菜の背中を追っている。

「話しました。友達やめるって言うと思ったのに……」

明葉は涙を拭う。

思い出すだけでまた泣きそうだった。

「良いお友だちで良かったわね」

「もう良いって言ってくれたんです。もう私が私を許して良いって……」

ポロポロとまた涙がこぼれ落ちる。

ああ、もうなんで私雪菜にあんな酷いことさせてたんだろう。

親友なのに。そう言ってくれたのに。

「ハイハイ。泣かない泣かない。――さっきも言ったけど状況は厄介なことになったわ」

「……農業連合は引きませんでしたか」

まあ、そうだろう。農業連合にとっては七国すべての食物流通を押さえる好機なのだ。

そう簡単に撤回するとは思えない。

「そんな簡単な話じゃないのよ。まずね北限国家がそこに割り込んで来たのよ」

「はい?」

北限国家。冒険者の国、ということ以外はほとんど知らない国だ。かつて会った四人の冒険者以外に接点はない。

「それだけじゃないわ。神聖王国、銀行商業都市、南洋連合――要は残りの国全部が割り込んで来たのよ。ちょっともう四カ国に頭ん中で通信合戦される身にもなって頂戴よ……。あーマジで頭痛い」

「え、え、え」

意味が分からない。みんなそれほど銃が欲しかったのだろうか? いや、欲しいんだろうけど。

「要求は共通してるわ。『勇者の二重契約――それが許されるのであれば――ぜひ我が国にお越しいただきたい』、だってさ」

「…………狙い、私、ですか?」

明葉ポカン。

意味が分からない。

自分にそんな価値があるとは思えない。

「でね、結局今週土曜日首脳会談もかねてプレゼン大会をすることになったから。一国当たり二十分ね」

「いやいやいや、ちょっと待ちましょうよ。来週土曜日っていくらなんでもフットワーク軽すぎでしょう! と言うかなんで私!? 大した功績も能力もないですし!」

「――と思ってるのはもうあなただけみたいよ? 七国の共通理解じゃあなたは賢者の頭脳を持ち敵国の勇者を追い返したどころか従属させた超有能な勇者ってことになってるから」

「勘違いです!」

「というか、この場合別に優秀である必要は無いわけだし」

「……どういう意味ですか」

その響きにはものすごい不穏なものを感じる。

「魔法鉄鋼王国と勇者を共有してその上で勇者を懐柔出来れば――それはスパイとして超優秀よね」

「……!」

そう言うことか! 勇者には報酬請求権がある。それを上手く悪用させれば国を傾ける事すら不可能ではないだろう。

「魔法鉄鋼王国は敗戦した……。この隙に付け入ろうと考えた訳ですか。最早軍事大国の威光は過去のものだと」

「逆に言えば、学術科学都市との共有が一番魔法鉄鋼王国にとって都合が良かったんでしょうね。あんな扱いじゃあなたが靡くはずもないし、鎖国状態だった学術科学都市と少しでも窓口が開けるに越したことはないし、魔法使いがいないから召還技術が漏れても大した問題にはならないし」

だから、許可した。

それを周りが黙って見過ごす訳がなかったということか。

「魔法鉄鋼王国と学術科学都市の接近を妨害できるだけでなく魔法鉄鋼王国の切り崩しにもなる……。これが敗戦したと言うことなのですか……」

「……そうみたいね。で? あなたはどうしたいの?」

仁ノ宮さんは明葉を見る。

真っ直ぐに視線を逸らさずに。

明葉の瞳のその奥を覗き込む。

「……薙高に受かりたい。ちゃんと頑張って、頭よくなって、雪菜に頑張ったよって言いたい」

こぼれ落ちたのは、呆れるほどに矮小な願い。

いったい都内で何人の中学生が同じ願いを抱いている事だろう?

それでもそれが明葉の全てだった。

「そっか。じゃあそう伝えとく」

「はい?」

「プレゼン大会のテーマそれになったから」

…………良いのだろうかそれで


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