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戦場の風  作者: あの人
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第6話》反逆。そして…《

外から怒号や叫び声、そして火の手が上がり始める。


始まった。

カイルは兵舎から飛び出す。

視界の端ではカトルが巨大な弓を操り矢を雨の如く降らせている。

カイルはロストとの合流地点を目指す。


アルンの本拠地は広いそして複雑だ。


建物と建物の間を縫うようにして駆けていると、突然目の前に兵士の部隊が現れる。

「おい!そこのお前!何処に行く!?」部隊長らしき男がカイルを指差しながら怒鳴り散らす。


まずい。

バレたらガイル将軍達の作戦が無駄になる。

色々と思考していると、

しびれを切らした部隊長が

「聞こえないのか!?

もう一度言う。

何処に行くつもりだ!?」


強行突破しかない。

ロスト中将との合流地点は近い。

早く行かなければまずい。

刀の柄を強く握る。


その時だった。

カイルの視界の端から黒い影が飛び込んでくる。

兵士達も気付く。

黒い影は次々と兵士達を殴り倒して行く。


部隊長は素早く剣を構え影を切りつける。

だが遅い。

影は剣を避け、部隊長の男に蹴りを喰らわす。

部隊長の男は地に倒れ動かなくなった。


「やっぱり面倒な事になっていたか…来てよかった…。」


黒い影が近付いてくる


暗闇なのでわかりにくいがロスト中将だ。背中には巨大な剣を背負っている。


「中将、すいません…助かりました…」


カイルは柄から手を離し一礼する。


「時間が無い…行くぞ!」

ロストが駆けだす。

カイルも後を追い、駆ける。


何度か敵の兵に遭遇したがやりすごした。


それから少し進むとと少し大きな建物が見え始める。周りには兵の姿が見えない。ガイル将軍達が頑張ってくれているようだ。


「あれだ…あれの地下の奥に魔導兵器がある…」


ロストが呟く。


「どうやって侵入しますか?」


「地図を見る限り、正面の扉しか出入口しかない。」


「つまり…」


「突っ込むぞ…!」


ロストは背中の大剣の柄を握りしめる。


「わかりました!」


二人は駆け出す。


後80m位だろうか

そこまで駆けた。

だが次の瞬間、辺りに火がともりロストとカイルの姿が照らしだされる。


「クソッ……!ばれていたか…!!!」ロストがすぐに背中から大剣を取り出し構える。


カイルも刀を鞘から引き抜く。


その時だった。


「カイル!!!!!横に飛べ!!!!!」


ロストが急に怒鳴る。


カイルは思いきり横に転がった。

カイルとロストがいた場所に無数の矢が突き刺さる。


「そうか…裏切ったのはお前か…!!」

ロストが怒りに震えながら呟く。


「その通りですよロスト中将!」


建物の上には……ガイル将軍と共に戦っている筈の…そうカトルが怪しく笑いながら立っていた…。


「カトルさん!!!!!何故あなたが…裏切るなんて…!!!」

カイルはカトルを睨みながら怒鳴る。 

「馬鹿馬鹿しい!それに強い方に味方するのは基本ですよ基本!!!!」

カトルはカイルが見たことの無い程おぞましい顔で叫ぶ。


「そうだ。カトル大佐は正しい選択をしたのだ。」


低く唸る様な声が響く。


「アルベルト大将…!!!」


ロストが呟く。


正面から巨大な…スキンヘッドで全身分厚い鎧に身を包み右手に巨大なハンマーを持っている男…

『十三武神』の一人…アルベルト大将が現れた。


「ロスト中将…!お前が反逆するとは思ってもみなかったぞ!!」

アルベルト大将が怒鳴る。


「アルベルト大将…!自分は自分の想いに素直になっただけだ!!!」


「ガイル中将か…!」


アルベルトはロストを睨みながら指差す。 

カイルは指差す方向を見る。

そこには鎖で拘束されたガイル中将が兵に引きずられて現れた。


「将軍!!!!!大丈夫ですか!?」


カイルはガイルに問掛ける。


「ワシは大丈夫だ!!!まんまとはめられたがのう…」


ガイルはうなだれながら答える。 

「クソッ…ロストさん…マヒロさんとロックが外に待機しています…どうにかして合図を…」


「そういえば外に虫がいたな!!

今ごろ私の誇る軍に皆殺しにされているだろうよ!!」


アルベルトはカイルとロストの唯一の希望を砕いた…つもりだった。


「へっ…マヒロの野郎がそう簡単にくたばるかよ!!!」


「ロックはゴキブリ並にしぶといからな…あいつは死なない!!!」


逆にカイルとロストに火が付いた。


「ならばお前らが死ねい!!!!」


アルベルトがしびれを切らし突っ込んでくる。

「カイル!お前は周りの雑魚を頼む!!!俺にアルベルトは任せろ!!!!」


ロストは大剣を構え走りだす。


「わかりました!!!」


カイルは敵兵の中に突っ込む。

左から剣が振られる。避ける。

正面の敵兵を斬る。

刀を全力で振るう。

2・3人の首が飛ぶ。

敵の突きが頬をかすめる。

怯まずにその敵の体を斬る。


ガイル将軍さえ助けられれば戦局が変わる筈とカイルは考える。

しかしガイル将軍との間には敵兵が何十人もいる。

魔法が使えれば…とカイルは自分の力の無さを呪った。


視界の端では僅かだがアルベルト大将とロスト中将の死闘が見える。

だが今のカイルにはロスト中将の事を心配する余裕が無い。


多分ロスト中将も同じだろう。

気を抜けば容赦なく殺られる。


カイルは雄叫びをあげる。

兵が一瞬怯む。

カイルは斬り進む。

ガイル将軍を助けるため。

1人2人3人4人5人…………

次々と斬る。


その刹無、前方から爆炎が上がる。

今まで何度も見てきた炎だ。


カイルの側まで槍を構え突っ込んで来る見慣れた不健康そうな男。


「ロック!!!!!」

カイルは叫ぶ。


「無事か!?カイル!」


「大丈夫だ!!!!!」


カイルが返事をした瞬間、周りを囲んでいた兵士達が吹き飛ぶ。


「ガハハハハ!!!マヒロ、ロック、よくやった!!!!カイルもよく踏ん張ったな!!!」


「将軍を縛ってた鎖、堅いったらありゃしない!」


ガイル将軍を助けたのはマヒロさんだろう。


ガイル将軍は今までの鬱憤をはらすかの様に斧を振り回し敵兵を薙ぎ倒していく。


 

だが敵兵の勢いは止まらない。


カイル・ロック・マヒロはまた敵に囲まれてしまった。しかもガイル将軍は孤立してしまっている。


建物の側ではロストとアルベルト大将は死闘を繰り広げている。


ロストは内心焦っている。

マヒロが生きている事を知った時は安心したが、今はマヒロ達がまた敵兵に囲まれている状況が気になるからだ。


「何処を見ている!!!ロスト中将!!!」


アルベルト大将の雄叫びで現実に意識が戻る。

鉄槌が迫る。

素早く大剣でうち払う。

重い。そして鋭く、正確な一撃だ。

死と隣り合わせの状況に舌うちをする。

その刹無、アルベルト大将が即死の一撃を放つ。

無理だ。避けられない。

大剣を盾にする。

全身に衝撃が走る。

気付くと足が地を離れ体を浮遊感を包む。

そのままカイル達を囲んでいる敵兵達の中まで吹き飛ぶ。


カイル達は円陣を組み、目の前の敵を確実に倒していた。


その時だった。

一部の敵兵の包囲が崩れる。

崩れた所からロストが吹き飛んできて、カイル達のすぐ側に落ちてきた。


「ロスト!?大丈夫かい!?」


マヒロが驚きながら問い掛ける。


「げほっ…大丈夫だ…」


ロストはそう言うが、カイルはそうは思えなかった。

顔には無数の傷があり口からは血が出ている。

さらにロスト愛用の大剣は真ん中から真っ二つにへし折れていた。


だがロストは再び立ち上がる。


「ロスト…あんた魔法使わないのかい…?…まさかまだあんたあの事を…」 

マヒロの言葉をロストは手で止める。


「アルベルト大将が来やがった!!!!」

ロックが叫びながら敵を槍で突き刺す。


「マヒロ…俺は魔法で過ちを犯した…。だから…俺は魔法を自分で禁じたんだ。」

 

マヒロさんとロスト中将には何かしらの訳がありそうだ。


「アタシは気にしてないって散々言ったのに…

それにロストアンタ…ボロボロじゃないか…」


マヒロがロストの頬を触りながら呟く。


「…わかったよ…使いますよ…使えばいいんだろ?」


ロストはぶっきらぼうにそう言うと側に落ちていた敵兵の剣を拾う。


「ヤバいぜ姉さん!!!!!!

アルベルト大将が来やがった!!!!」


「お前ら俺の後ろに居ろよ!!!!」


ロスト中将の体から炎が噴き出す。


「はあ!?ロスト中将魔法が使え無いんじゃ無いのかよ!?」

ロックが状況を掴めないでカイルに問いかける。


「後で説明してやるから集中しろロック!!」

ロスト中将が言う。


「アタシらは周りの敵を殺るよ!!!カイル!!!アンタは魔導兵器を探しに行きな!!!!」


魔導兵器…。

戦いに集中しすぎて忘れていた。


「わかりました!!!」


カイルは建物の出入口目指し駆け出す。


視界の端ではガイル将軍が相変わらずの勢いで敵を斬り飛ばしている。

その姿を見て気が緩んだ。


その瞬間だった。


アルベルト大将が目の前に現れる。

「若僧!!!!ここから先は通さん!!!!!」


アルベルト大将が目の前に飛び出す。


「カイル!!!止まるな!!!!出入口を目指せ!!!!」


ロストの声が響く。

カイルは速度を速める。


「若僧め!!!そこまで死にたいか…!!!!」


アルベルト大将が鉄槌を構える。

次の瞬間カイルの視界に稲妻が飛び込み、アルベルト大将に直撃する。

多分ロスト中将が放った魔法だろう。カイルはロスト中将に感謝しながらアルベルト大将の脇を素早く駆け抜け、出入口の扉を蹴り破り、建物の中に消えて行った。


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