第4話【反逆の狼煙】
「将軍…本気ですか?」
カイルはガイル将軍に問う。
「ああ…これしか手段は無い。
魔導兵器を奪う…。」
「しかし…どうやってアルンの本拠地を攻めるのですか…?」
アルンはアルタイム軍のラインでの2番目に大きい基地だ。
それに…アルン基地には彼が…
『漆黒の死神』ロスト=カイツ中将が駐屯している。
「ロストの若僧も問題だが…。
本当の問題は…『十三武神』に数えられている…男…
『究極の鉄壁』アルベルト=カインズ」
アルベルト=カインズ…その名前を聞いただけでカイルは鳥肌が立った。
「アルベルト=カインズ…十万で攻めてきたガーデンズ軍を僅か五千人の兵で砦を守り抜いた人物じゃないですか…」
「奴は恐ろしい奴だ…しかしこちらには策がある…それに援軍もな」
ガイルは不敵に笑う。
「援軍?」
「時が来ればわかるだろうよ」
ガイルはそう言うと地図を取り出し机に広げる。
その時、
「将軍!入るよ!」
声と共にマヒロが入ってくる。
マヒロの後ろにはまた死にそうな顔をしているロックがいる。
「マヒロか!!ロックと傭兵団の奴らに説明したか?」
「傭兵団の馬鹿共はやる気まんまんさ!」
「そうともさ!やってやるよ!」
そう呟くロックの顔に輝きが戻る…が元々不健康な顔をしているので相変わらず死んだ魚の様な目をしている。
「とにかく、魔導兵器は…ここにあるはずだ。」
とガイルは地図上のアルン基地の北東の建物を指差す。
「情報が正しいならばここの建物の地下にあるはずだろう」
「将軍…情報は一体誰から…」
「おう忘れてた忘れてた…カトル!こっちへ来い!」
「カトル?…まさか…」
ロックが呟く。
するとテントの中に黒髪で眼帯をした背中に巨大な弓を背負った男が現れる。
「やっぱりあんたか!!!!兄貴!!!!」
ロックはカトルと呼ばれる人物を指差しながら叫ぶ。
「兄貴ってロックあんた兄貴いたのかい?」
「兄貴い い い い!!!!」
ロックはカトルに向かい走りだす。
普通ならここで抱き合い感動のシーンの筈が…
「死に腐れえええええ!!!」
急に叫びながら殺気全開のロック。
「甘え!!!ガムシロップより甘え!!!」
と叫ぶカトル。
カトルはロックの右フックを避けると、
回し蹴りを放つ。
しかしロックはそれを側にあった椅子でガードする。
宙に舞いバラバラになる椅子。
唖然とするカイルとマヒロ。
打撃戦を展開するロックとカトル。
馬鹿だ本当に馬鹿だ。
すると突然ゴツン!と何かがぶつかった音がする。
ガイル将軍がロックに向けて鉄拳を振り落ろしたのだ。
「ぐえっ…!」
というロックの断末魔と共に地に伏し動かなくなった。
「とりあえずこいつがカトルだ。
ロックの兄らしい。
こいつはロストの部下で位は大佐。
情報はこいつが提供してくれたんだ。」
とガイル将軍が何事も無かったかのように紹介する。
「よろしく。家の愚弟が世話になっております。」
とカトルは一礼。
「で…結局攻め方はどうするんだい?」
マヒロがウンザリしたように聞く。
「二手にわける。
ワシの軍にカトルとカイルを加えて、アルンに入る。
傭兵団とマヒロとロックは外に隠れて待機していてくれ。
」
「了解だオッサン」
いつのまにか起きていたロックが頭をさすりながら呟く。
「そして夜になったら派手に合図を送る。
そしたらマヒロ達はアルンに突っ込んで来てくれ。」
「魔導兵器を奪ったらどうするんだい?
かなりの追撃が来るっぽいよ」
マヒロが髪をいじりながら聞く。
「その後はラスクの砦に向かう。」
「ラスク!?あそこはアカツキ軍の砦じゃないですか!」
「この戦いが成功したらアルタイムとは縁を切る事になる。
アカツキにはちょいとした友人がいてな、訳を話したら快く了解してくれたよ。」
とガイルは話す。
「つまりアルタイムからアカツキに所属を変える…という事ですか」
「ああ、そういう事になるなカイル」
一国を敵に回す。
だが敵に回さなければ罪の無い人々が死ぬ事になる。
「作戦はこれくらいだ。」
とガイルが言う。
「アタシは傭兵団の奴らに伝えて来るよ」
マヒロはテントを後にする。
「マヒロ姉さん俺もいきやす!」
ロックはマヒロを追う。
「ワシらも解散するかのう」
とガイルがテントからでる。
「カイル君、頑張ろうな!」
カトルはそう言い残してテントを去る。
カイルはテントから出た。
空が透き通る様に青い。
嵐の前の静けさか。
軍はアルンに向けて行軍を再会する。