第22話【酒場で】
〜ログタウン〜
船を降りる。
今は夜だが街は活気に包まれていた。
酒場からは陽気な声が響き、露店が至る所で商売をしている。
「とりあえず宿を探そうか。」
「ジン大将。
既に手配してありますよ。これから案内します。」
サラさんが先頭を歩き始める。
「本当、有能な部下を持ったな。」
うなだれているジンの肩をロストが叩く。
「カイル早く行こうよー。」
ルナがカイルの袖を掴み引っ張る。
とりあえずサラさんの後について歩く。
人で賑わう大通りを通り、少し歩いた所にある宿屋に入った。
「いらっしゃい!!!
え〜と…予約のお客かい?
名前は?」
見るからに酒場の女将という感じの女性が、宿のカウンター越しに聞いてきた。
「九人で予約のサラですけど……確か二部屋、予約しましたよね?」
「とりあえずそこのお姉さん二人とお嬢ちゃんで一部屋。
後の男達で一部屋で良いね?。」
そう言うと女将は鍵をサラさんとジンさんに投げる。
「荷物は部屋に運んでおくから、先に夕飯にしたらどうだい?
ちなみに食堂は酒場と一緒だからね。」
女将はそう続けて言うと指を鳴らす。
カウンターの奥から見習いと思われる男が現れた。
「荷物をお運びしておきます。」
男はそう言うと、荷物を大量に担ぎ、ドタドタと階段を駆け上がって行った。
とりあえず、カイル達は酒場に向かい空いていた大きなテーブルを九人が囲み座る。
広い酒場の中ではカイル達の他にいかつい船員らしき男達が沢山いた。
そして少しするとさっきの女将が大量の料理が盛られた皿と酒の瓶をテーブルの上に並べ始めた。
「うっひょー旨そう!」
ロックが喜びの声を上げる。
「どんどん食べなさいよ!!!
ほらほらお嬢ちゃんもね!」
女将さんはルナの頭を撫でながら言うとまた厨房へと戻って行った。
「いやぁ〜しかし久しぶりだねえ。こんな酒場に入るのは。」
ダイソンさんが酒を一口含んで言う。
「そうだのう。
お前と一緒に酒を飲むのは何年振りかのう…。」
「ガイルさんとダイソンさんは古い仲なんですか?」
ルナがコップを片手に尋ねる。
「ああ…大体……二十年位かな…。」
「懐かしいのう…。
お前がまだ『魔鏡』と呼ばれてた事を思い出すのう…。」
「そういえばガイルお前…………。」
二人は昔話に花を咲かせている。
完全に二人の世界に入った。
「本当仲がいいわねえ…将軍とダイソンさん…この馬鹿二人に見習って欲しいもんだね…。」
マヒロさんが溜め息混じりに呟く。
多分馬鹿二人とはジンさんとロストさんの事だろう。
「まあまあ、良いじゃないですか。」
視界の端ではロックがまたまた料理を飲むように口の中へ流し込んでいる。
その隣でサラさんはロックを驚きの表情で見つめていた。
「腐れ縁って奴だな…こいつとは。」
ロストさんがおもむろに口を開く。
「本当だよ。こいつとは切っても切れない腐れ縁で繋がってるよ…。」
そしてジンさんとロストさんは軽く笑う。
「……何気仲が良いじゃないですか……。」
「何気ってなんだよカイル!!」
ロストがカイルの肩を叩く。
しかし…妙だ。
隣のルナが静か過ぎる。
それに何だか酒臭い。
まさか………。
「あははははは!!!」
急にルナが笑いだす。
顔は真っ赤だ。
素早く先ほどまでルナが持っていたコップの中身を確認する。
……………酒だ。
間違えたか誰かが…多分ジンさんが悪戯したのだろう。
ジンさんは満面の笑顔で笑っている。
確信犯だ。
「ちょっとルナちゃん!?
カイルあんた水持って来なさい!」
慌てて席を立つ。
するとロックが椅子ごと後ろに派手に倒れた。
ロックの顔が真っ青だ。
「が………う………み………水………。」
「カイル君!!!こっちにも水お願い!!!」
多分この馬鹿は料理が喉に詰まったのだろう。
慌てて水を取りに行く。
大変な状況だが………こんなのもたまには良いと思う。
騒がしい時間が続く…。