第15話【目指すはアカツキ】
…誰よりも早く起床してしまった…。
窓から外を見る。
まだちょっと暗い。
夜明け前だろう。
「……あちゃー…早起きしすぎた…。」
などと独り言を言ってみる。
しかし……ロックとガイル将軍のイビキが本当にうるさい。
よくこの爆音の中で寝れたものだ。
毛布を持って居間へ行く。
とりあえず皆が起きるまで時間を潰すために、なんとなくだがベランダに出る。
ベランダからは砦を一望出来る。
裏門の辺りには馬車が用意されている。
多分あれで次の目的地、マイロタウンに向かうのだろう。
マイロタウンはラスク砦から大体2・3時間で着くらしい。
ただ、そこからの船旅が半日はかかるらしい。
少し考え事をしているとふと後ろに人の気配を感じとる。
ゆっくり振り返るとそこには、ルナが立っていた。
「邪魔しちゃった?」
ルナが聞いてくる。
「全然大丈夫だよ。
早く起き過ぎて暇だったし。」
「ねえカイル…これからどうなるの?」
「とりあえず、港町に向かうんだってさ。
海を渡ってアカツキを目指すんだって。」
「海?海って何?」
ルナがカイルの隣に歩み寄り、聞く。
「あー……そうか、見たこと無いんだっけ……。
うーん…大きな大きな水溜まりかな。」
「…本当!?楽しみね!」
ルナは笑いながら言う。
目はキラキラ輝いている。
最初に助けた時よりも大分、明るくなってきた。
これが本来の彼女なのだろう。
「寒いしそろそろ居間に戻ろうか?」
「うーん、わかった。」
ルナがカイルの服の袖を掴み引っ張る。
居間に入るとソファーにマヒロさんが座っていた。
ソファーの向かい側ではダイソンさんとガイル将軍が地図を見ながら話している。
「おはよう、ルナちゃんにカイル。あんたら早起きだねえ。」」
マヒロさんが感心した様に言う。
「えー、そうかなあ。」
ルナが照れ臭そうに言う。
「ガハハハ!!お前ら!今日は大移動するからな!覚悟しておけよ!」
ガイル将軍が言う。
「まあ、気分を変えて行こうじゃないか。それに船に乗るんだしね。」
ダイソンさんが無精髭を触りながら口を挟む。
「船かあ……久しぶりに乗るなあ。」
何年ぶりだろう。
「船って私初めてだなあ…。」
ルナが興奮しながら言う。
その時、今の扉が開く。
ジンが長い袋に包まれた何かを担いで入ってきた。
「皆様おはよう!!!
あれ?ロストは?」
「ロストならまだ爆睡しとる。」
ガイルがコーヒーを飲みながら言う。
「しょうがないなあ…最高の目覚めをプレゼントしてあげようか。」
ジンはそう言い残し、荷物をカイルに預けると寝室に入って行く。
そして寝室から爆音が響く。
ロックの悲痛な叫びが聞こえる。
寝室からロックが飛び出して来た。
「おはよう…カイルにマヒロ姉さんにルナちゃん…」
こいつは朝は決まって低血圧なのでテンションが低い。
寝室の中では何かが壊れる様な音がしている。
音が止み、少ししてからロストがジンを引きずりながら出てきた。
「朝っぱらから…こいつは元気だな…。」
ロストはジンから手を離す。
「さっさと起きないのが悪いね。
まったく……あ、そうそうロストお前に渡す物があるんだよ。」
ジンはそう言うとカイルから荷物を受け取りそれをロストに投げる。
「お前の剣折れたんだろ?
だから用意したよ。」
「お、悪いな。ありがとな。」
そうロストは言うと荷物を担ぐ。
「さあて、そろそろ出発しようか。」
ダイソンが上着を羽織ながら言う。
とりあえず、カイル達は準備を済ませ裏門へ向かう。
馬車の前にはルミネ少将とサラ少尉が既にいた。
「ジン大将、準備が出来ました。」
ルミネ少将が言う。
「ありがとうルミネ君。
この砦は任せたからね。」
ジンはそうルミネ少将に伝え、馬車に乗り込む。
「カイル君またよろしくね。
後ろの彼女は確かルナちゃんだよね?
よろしく。」
サラが笑いながら挨拶してきた。
「よろしくお願いしますサラさん。」
サラが馬車に乗り込む。
「ワシとロストとダイソンが手綱を持つからのう。」
ガイル将軍はそう言うと馬車の前にある所に腰掛ける。
その隣にロストとダイソンが座る。
そしてロックが先に馬車に乗り、カイル、ルナという順番で乗り込む。
最後にマヒロが乗る。
馬車の中は広かった。
カイルの左隣にルナが座り、右にはロックが座る。
そしてロックの向かい側にはサラが。
カイルの向かい側にはジンが。
ルナの向かい側にはマヒロが各々座っている。
「ほら、出発するぞ!!」
ダイソンさんの声と共に馬車がガタゴト動き出す。
外ではルミネ少将が手を振っている。
手を振り返す。
馬車は砦を出て港町マイロタウンへと向かう。
目指すはアカツキ国。