第11話【ファクトリー】
「次は何をすれば良いんですか?」
「後は自分で考え、自分で工夫してやるんだ。以上!」
ダイソンが言う。投げやり過ぎる。
理不尽だ。
「自分で考えないといざと言うとき、困るからのう。」
ガイルが付け足す。
「って事で今日は解散だ!」
最後にジンが言う。
ロックがソファーから立ち上がり、フラフラとベッドに向かう。
流石に心配なので横について歩く。
「大丈夫かよ、お前。」
「…駄目…死にそう…」
不健康とか通り越して今にも死にそうだ。
そして寝室に入るとロックは、自分のベッドに倒れ込み、死んだように眠り始めた。
ルナは相変わらず深い眠りに落ちている。
カイルは居間へ戻る。
「ロックはどうした?」
ガイル将軍が聞いてくる。
「死んだように眠ってますよ」
「まあしょうがないか…」
「あー…そうそうカイル君、最後に魔法についてアドバイス。
イメージが大切だからねイメージが。」
ダイソンがそう言った時だった。
扉が勢いよく開く。
そこには、軍服姿の女性がいた。
年齢はマヒロと同じ位だろうか?橙色の髪を後ろで束ねている。
「ジン大将!!!!敵軍です!!!」
彼女が言う。
「ルミネ少将か…ああ紹介するよ!
彼女はルミネ=ラトリウム少将。
ここの守備隊長だ。
…それで敵の軍勢は?」
ジンの表情が真剣になる。
「数は不明ですが…ファクトリーの軍勢です!
軍勢を率いるは…『鮮血の獅子』ラッシュ=ガイダンス中将です!!」
『鮮血の獅子』ラッシュ=ガイダンス。
残虐な性格で有名な軍人。
村人を皆殺しにし、略奪をする。
その悪名は名高い。
「目的は……彼女だろう…。」
ダイソンが苦々しく言う。
ルナだ。
きっとルナを狙って来たのだろう。
「しかしなんでアルタイムじゃなくてファクトリーなんだ?」
ロストが首を傾げる。
「多分アルタイムはファクトリーに情報をわざと流したのだろう。
こちらの小手調べって所かのう…」
ガイルはそう言うと鎧を着る。
「ちょっと待ったガイルさん!
貴方達はこの砦に客人として来てもらったんだから、戦いは私達アカツキ軍に任せて下さいよ。」
ジンが慌てて言う。
「そんな訳にはいかん。
ワシらが問題を持ち込んだ以上、ただ見ている訳にはいかんのう。」
ガイルはそう言うと今度は斧を担ぐ。
ロストも準備をしようとする…が
「わかりましたよ…ガイル将軍…
ただしロストお前は今回は駄目だ!」
「うるせえジン!!!なんでだよ!!!」
「あたしもロストが戦いに行くのは反対だね。」
マヒロが言う。
「大怪我してる今のお前じゃ足手まといだ。」
ジンが強く言う。
確かにとカイルは感じる。今ロストはアルベルト大将との戦いの傷跡が酷い。
肋骨は折れ、左拳に至っては魔法の反動で火傷している。
さらにロスト愛用の特注の大剣はアルベルト大将の一撃で折れている。
「ロストさん…自分も反対です。」
カイルも反対する。
「ぐっ……!わかったわかったよ!!今回は辞める!!
ただし、俺は砦から指示をジンと一緒に出す。これだけは譲らねえぞ!」
「頑固な奴だな…よし…とりあえず全門を閉めてくれ。
僕は正門の上に行く。カイルとガイル将軍とロストは僕に着いて来てくれ。
ロックは……まあ今回は無理だろう。マヒロはロストの側を離れないようにしてくれよ。」
ジンは的確に指示をする。
「でも…ルナが…」
この砦に侵入して直接ルナを狙ってくる可能性も低くない。
「私がここに残ろう。」
ダイソンが眼鏡を不敵に光らせながら口を開く。
カイルはダイソンの魔法の一撃を受けたからわかる。
この眼鏡のオッサンもといダイソンはかなり強い。
ダイソンなら確実にルナを…あとついでにロックも守りきってくれるだろう。
「よし!決まりだ。ルミネ君、弓部隊を砦の上に配置してくれ。
砲台の準備もだ!あと僕の弓を用意してくれ!」
ジンはあたふたと鎧を着込みながらルミネに言う。
「すでにジン大将の弓は用意済みです。
配置も準備も全て終わっています。」
ルミネが外に居ると思われる兵を呼ぶ。
大きい。カトルが使っていた弓より巨大だ。
よく見ると弓の弦が鉄で出来ている。
さらに、格所に機械の仕掛けが着いており、力を増幅させる仕組みだろう。
「………ありがとうルミネ君!」
ジンは一瞬呆気にとられるが、すぐに切り替える。
カイルも素早く鎧を着込み、腰に刀を携える。
「よし、行くかのう。」
ガイルが言う。
ジンがルミネを連れ、部屋をでる。
カイルもついて行く。
これから、防衛戦が始まる…