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戦場の風  作者: あの人
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第9話【アカツキ】

夜が明けた。


ルナは相変わらずグッスリ眠っている。


カイルは馬の足を速めさせ、先頭に居るガイル将軍とダイソンが乗る馬に近付く。


 

ガイルがそれに気付く。


「おう、カイルか。

どうした?」


「将軍…後どれくらいで到着しますか…?」


「そうだのう…後少しでアカツキ国の使者との合流地点に辿り着くかのう…」


「そうですか…ありがとうございました」


カイルは一礼をしてガイル将軍の後ろの方に馬を移動させる。


「よう…カイル…おはようさん…」


声がした方向を見る。カイルは一瞬ひく。何故ならロックが本当に死にそうな顔をしているからだ。

さらに目の下に大きなクマが出来ていていつも以上に不健康そうに見える。


「お前…いつも以上にヤバそうだな…」


「当たり前だ…昨日は頑張ったからな…」


「そういえば本当はロスト中将、魔法が使えたんだよな?」


「ああ…理由は分からないけど…魔法を自ら使うの辞めてたらしいぜ…」


「へぇ……」


「マヒロの姉さんと昔なんかあって………それから使うの辞めたらしいよ………まあマヒロの姉さんは砦に、着いたら俺らに教えるって言ってたけどね…」


「砦にねえ…」


ロスト中将はマヒロさんと何かあるのは雰囲気からわかる。


「よう、カイル・ロック。昨日はお疲れ様だったな。」


そこにカイルとルナと同じようにマヒロを前に抱えたロストが横から話かけてきた。 

「ロスト中将おはようございます」


「カイルもう俺は中将じゃない。ただの反逆者ロストだ。

中将なんて堅苦しい呼び方よしてくれ。」


ロストは笑いながら言う。


「わかりましたロストさん。

ところで…マヒロさん寝てるんですか?」


「ああ…こいついつの間にか寝やがった。」


マヒロさんは寝息を立ててグッスリ眠っている。


「俺も寝たい…誰か…」


ロックが呟くが無視をしてロストが続ける。


「それにカイル…彼女の事だが…悪かったな…本当の事を教えなくてな…」


ロストがうつ向きながら言う。


「別に気にしてないですよ。

しかしルナはこれからどうなるんですかね…?」


「それも砦に着いてから決めるだろうな…」


「そうですか…」


ルナとは他人の気がしない。

それに、あのネックレスを見つけた時から何か…自分の体に違和感を感じていた。

まあ、なるようになるだろう。


「ロスト!!カイル!!あとロック!!!アカツキ国の使者が見えたぞ!!!」


ガイル将軍の声が響く。


「カイル、それにロックほらしっかりしろ。ガイル将軍の所に行くぞ。」


そしてカイル、ロスト、ロックはガイル将軍の側に近付く。


ガイル将軍は使者らしき男と話をしている。


少しすると将軍は大声で


「後少しでラスク砦だ!!!!!!

お前ら後少しの辛抱だ!!!!」


と激励をする。


ガイル将軍の後ろにはダイソンさんが座っており無精髭を触っている。


使者らしき男は馬を走らせ軍勢を先導し始める。


しばらくすると目の前に砦が見え始める。


大きい。


アカツキ国の誇る巨大な砦ラスク。


「おいマヒロ起きろ!

ラスクに着いたぞ!

カイル!お前も彼女を起こしてやれ!」 

ロストはマヒロを揺すりながらカイルに言う。


気が進まないがカイルはそっとルナを揺すり起こす。


「あれ…?カイル…?ここは…?」


ルナは目を擦りながら周りを見回す。


「おはようルナ。

ここはアカツキ国のラスク砦の近くだよ。」


「ラスク砦?」


「簡単に言うとアカツキ国が俺らを助けてくれるんだよ」


 

「カイル!!!!やっっっと休めるぜ!!!!!」


ロックが急に現れ、叫ぶ。

カイルは心の中で空気読めよな…と呟く。

まあロックらしいと言えばロックらしいが。


「…誰?」


「あいつはロックって言うんだ。

俺の友達だよ。」


「友達…?」


「まあほとんど腐れ縁だけどな。」


ロックが笑いながら言う。


「うっせえロック!!!!」


その時だった。

前からロストの叫ぶ声が響く。


嫌な予感がする。ロックとカイルが急いで馬を向かわせるとそこには落馬したと思われるロストが倒れていた。 

横にはマヒロが寄り添い必死で謝っている。


「マヒロ姉さん…まさか…また寝惚けて…」


マヒロは寝起きが物凄い悪い。

昔ロックとカイルが起こしに行ってロックがボコボコにされた。


「わ…忘れてた…寝起きが悪い…って…事…」


倒れていたロストが呟く。

ロストは昨日アルベルト大将と死闘を繰り広げたせいで大怪我をしている。

多分マヒロが寝惚けて放った一撃が入ってしまったのだろう。


「大丈夫なの……?あの金髪の人…?」


流石にルナも心配そうにカイルに聞く。


「多分…大丈夫だよ…多分…」


しばらくするとロストは自ら立ち上がりマヒロの肩を借り、


また馬に乗る。


そして何事もなかったかのようにまた進み出す。


するとロストの後ろに座っているマヒロさんが話かけてきた。


「またやっちまったよカイル…。

それに…ルナちゃんだっけ…?

アタシはマヒロってんだ。

こいつらの親代わりみたいなもんさ。

よろしくね。」


マヒロさんが笑いながらルナに握手を求める。


ルナは一瞬こちらを見る。


カイルが笑いながら頷くと、

ルナは恐る恐る握手した。


「ルナちゃん…困った事があったらいつでも言いなさいよ…アタシはあなたの味方だからね!」


マヒロは優しく語りかけながらルナの頭をそっとなでる。


「…ありがとうございますマヒロさん…。」


ルナが軽く笑いながら頷く。


「ほら…着いたぞマヒロ…」


ロストが咳き込みながら言う。


かなりの痛みがある様だ。


巨大な門をくぐり、少し進みロストとロック達と同じ様に馬からルナを抱えて降りる。


ルナはカイルの腕を掴みながらピッタリと着いて歩く。


「カイル…本当…ゆっくり休める…」


ロックが呟く。

今にも倒れて眠りそうな顔だ。 

ガイル将軍とダイソンさんに近付く。


ガイル将軍は男と話をしている。


男は茶髪で、ショボくれた顔をしている。いや…多分眉毛が垂れているからそう見えるだけだろう。


するとロストが男に向かって


「久しぶりだな…ジン…」


「ロスト…お前…ボロボロ…」


男は苦笑しながら言う。


「うっせえ…訳があるんだよ訳が…」


ロストとショボくれた男…ジンは知り合いの様だ。


「まあとりあえずガイル将軍貴方達を客人としてラスク砦に迎え入れます。

ようこそラスク砦へ!!!!!」


そう言うとジンはクラッカーを取り出し鳴らす。

茶目っ気たっぷりだ。


「…とりあえず部屋に案内しますか。」


ジンの後に着いて建物の中に入る。 

まるで城の様だ。


ロックは口をあんぐり空けながら歩いている。


ロストはマヒロに肩を借りて足を引きずりながら歩いている。


ガイル将軍はダイソンさんとジンと何やら重要そうな話をしている。


カイルはルナと一緒に歩いている。


「緊張しなくてもここは安全だよルナ。」


「わかってるけど……」


ルナはカイルの服を強く掴む。


「それに…ロックもロストさんもマヒロさんも優しい人だよ」


「…マヒロさん…暖かかった。

カイルも…。」


「ここが君達の部屋だよ」


ジンが大きなドアを空ける。


広い…カイル達7人のベットが7個広々と並べられている。


奥には暖炉があり、居間もある。


「ああそうそう…浴場があるから食事の前に入って来ても良いよ。」 

ジンが言う。


「うっひょーカイル!!!!入りに行こうぜ!!!!!」


ロックが興奮して言う。


「もちろん男女別々だからね!」


ジンはニヤリと笑いながら言う。


結局、ロストは怪我の治療のため風呂には行かずに治療室にジンのお手伝いさんに連れて行かれた。


男湯にはカイル、ダイソンさん、ガイル将軍、ロック。


女湯にはマヒロさんとルナが入る事に決まった。


最初はルナはカイルから離れたくなさそうにしていたが、マヒロさんに着いていった。


風呂に入り終わり、食堂にまた集合する。

ロックは風呂で暴れ、ガイル将軍に殴られたたんこぶをさすっている。


ダイソンさんは体からでる湯気のせいかメガネが曇っている。


今カイルはいつも束ねている髪を束ねていない。


少し経つと女性陣も戻ってきた。


マヒロさんに連れられてきたルナは綺麗になっていた。


服は新しい物を着ていて顔色も良い。


ただまだ心はマヒロとカイルにしか開いていない。


その後少しするとジンとガイル将軍が現れる。


「湯かげんはどうだった?

とりあえず食事にしようか!」


食堂に案内されると

テーブルの上には大量の見たことも無いようなご馳走が並んでいた。


カイルはジンの隣に座る。

ルナはカイルの隣へ座る。


「ほら!皆ドンドン食べてくれよ!」 

ジンが言う。


向かい側ではロックが手を休めずに食べ物をかきこんでいる。


ロックにとって味わうと言う言葉は無いようだ。


ガイル将軍の側には皿が山積みだ。


マヒロさんは多分ロストさんの所に行っているのだろう。

姿が見えない。


ダイソンさんはさっきから

書類をじっと読んでいる。


隣ではルナが黙々と食べている。

こちらが見ているのに気付くと顔を赤らめてうつ向く。


別に気にしなくても良いのにと思いながらカイルは肉を一口食べる。


「カイル君?だよね」


ジンが話かけてきた。


「そうですよ、ジンさん。」 

「君も若いのに大変だね……まあ若いうちから色々経験を積むのは良いことだよ。」


ジンはそう言うと酒をぐいっと飲む。


「そう言えばジンさんはロストさんと知り合いなんですよね?」


カイルは問いかける。


「昔いくつかの戦で一緒になってね。ロストは昔アカツキ軍に居たんだよ。マヒロもね。」


「ロストさんがですか?」


「そうなんだよ。今と同じ様にゴキブリみたいな黒い鎧を着てさあ…………」


ジンは動きを止める。

後ろから殺気を感じる。


カイルが恐る恐る振り向くと。

ロストがマヒロに付き添われて立っていた。

手には松葉杖が握られている。


「ジン…お前…俺が怪我してなかったら…ボコボコにしていたよ…」


「ロスト!!まあ落ち着けって。」


ロストはジンの隣に、マヒロはルナの隣へ座る。


「ルナちゃん美味しいかい?」


「…うん!」


ルナは笑いながら言う。

最初はあまり笑わなかったがマヒロやカイルの優しさに触れてからか、じょじょに明るくなってきている。


「それは良かった!!!」


急にジンがルナに言う。


ルナはカイルの影に隠れる。


「……………嫌われた…………か…………」


ジンは悲しげな表情のまま机に大袈裟に突っ伏す。


「そんな…事無いですよ…」


ルナはカイルの影からジンに言う。


「本当かい?良かった!」


ジンは顔を上げる。


「ジン!!!あまり困らせるなよ。」


ロストは肉を取り皿に移しながら言う。


カイルの向かい側ではロックがデザートをまたかき込んでいる。

奴の胃袋はブラックホールか?


だが上には上がいる。

隣のガイル将軍の横にはロックをしのぐ数の皿が積まれていた。


しばらく各々が夕食を楽しみ、食べ終わる。


そして部屋に戻る。

何故かジンも着いてきた。多分重要な話をするのだろう。


カイルは眠たそうに目を擦るルナをベットまで連れていき、ルナを寝かせる。


「ねえカイル…」


ルナが急にカイルに言う。


「私を…独りにしないでね…」


不安そうにルナは言う。


「大丈夫だよ。いつでも側に居るよ。」


カイルはルナを勇気付ける。

今の彼女は不安で押し潰されそうに違いない。

もしガイル将軍が助けるのが遅かったら…もし彼女の護送任務がガイル将軍以外の人物だったら…彼女は…ルナは今頃殺されていただろう。


さらに彼女がされた数々の実験により彼女の心はボロボロに違いない。


「カイル…本当にありがとう…私ね、あの時…助けてくれた時カイルが眩しくて…温かく感じたの…。」


「俺が?」


「うん…眩しくて…優しい光に見えたの……ああ…まだまだカイルと話たいのに…眠いよ…」


ルナは目を擦る。


「俺は何処にも行かないよルナ。」


カイルはルナの頭に手を優しく載せる。


「わかった…カイル…おやすみ…」


「おやすみ…」


少し経つと寝息が聞こえ始める。


窓から空を見る。


今は夕方だ。

雲に赤い色が薄く掛りとても幻想的だ。


カイルはカーテンを閉め、ルナに布団をかけてから、居間に向かう。


居間には、ジン、ロック、ガイル、マヒロ、ロスト、ダイソン、がいた。


「やっと全員揃ったな。」


マヒロの横の床にあぐらで座るロストが言う。


「カイル…ルナは寝たか?」


ダイソンが神妙な顔付きで言う。


「ええ。さっき寝ましたよ。」


「よし…本題に入るか…」


ダイソンは全員に書類を配る。


「その書類はカイル君が持って来た物だが…まず内容を読んで欲しい」


ジンが全員に言う。


カイルは書類に目を通す。



カイルは言葉を失う。

書類の内容は魔導兵器…ルナについてだった…。


内容は数々の実験、について。


実験の内容は衝撃的な物ばかりだった。


カイルの胸が痛くなる。


さらに、ルナの体内には『宝玉』が埋め込まれていると記されていた。


「あー…すいませんが『宝玉』ってなんすか?」


ロックがおもむろに口を開く。


「『宝玉』ってのはな…簡単に言うと魔力の源…魔力の結晶みたいなもんだ。ただ希少価値が高くアルタイムでさえ全く所有していないらしい」


ダイソンが宝玉について説明する。 

「…つまりはアルタイムは宝玉を狙ってくる…」


つまり…


「これからルナを狙ってアルタイム軍が襲って来るって事ですか…」


カイルが呟く。


「その通りだカイル君。

…そして…宝玉がアルタイムの手に渡ったら…」


「また新しい魔導兵器が造られるってことね…」


マヒロがロストの横で呟く。


「更には下手したら…一国が滅ぶ事になるのう…」


ガイルが低く唸る様に呟く。


「めんどくせえ…ルナちゃんから宝玉取り出す方法は無いのかよ…?」


「まだ調べてる途中なんだ…だが必ず方法は見つける」


ダイソンは強く言う。


「しかし…難儀な問題だねえ……

うーん…そうだ…!!!!」


ジンは何かを閃く。


「この砦から2・3日したらアカツキ国に向かおう!!!それが良い!!!」


急に提案するジン。


これからどうなるのか…

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