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戦場の風  作者: あの人
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第8話『魔導兵器』後編

ロストがまだアルベルトと死闘をしていた頃。


カイルは目的地の建物の中にいた。


ロストやロック達の事を心配しながらも自分の役目を果たそうと建物の中を慎重に進む。


確か地下に魔導兵器があるとロスト中将が言っていた。


だが建物の中は以外に広く、なにより部屋が多い。そして誰もいない。多分避難したのだろう。


ただ中が明るいのは助かった。

魔法が使えれば簡単に火を出して周りを明るくできるのだが、

カイルは魔法が使え無いので出来ない。


片っ端から部屋の中を探る。


途中で技術者が使用したと思われる部屋を見つけた。


机があり、設計図らしき物を見つける。


後で確認すれば良いとカイルは考え、重要そうな書類を片っ端から懐に突っ込む。


机の引き出しの中も確認する。


「これは…?」


引き出しの中にネックレスがあった。

小さな緑色の綺麗な石が付いている。


カイルはそれを摘む。


「がっ…!!!」


突然酷い頭痛がカイルを襲う。


その場に倒れそうになったが気合いで踏みとどまる。


すぐに頭痛は無くなる。


一体なんだったのか?

カイルがネックレスを見つめる。


ふと見るとネックレスがあった引き出しの中に紙が一枚入っている。


「なんだこれ…?」


内容は

「実験台として用いた赤子が魔法を使い実験室から逃げ出した。


実験は成功だ。

赤子でも強力な魔法が使える様になった。


ネックレスだけでも赤子と離して保管していたのは不幸中の幸いだった。

赤子の代わりは決まっている。

実験は続行する。」


カイルはその紙を読むが訳が分からない。


時間が無いのでカイルはネックレスと紙を懐にしまい階段を探す。


その時カイルはとある事に気付く。


本棚の位置がおかしい。

カイルは閃く。


「なるほどな…」


カイルは本棚を横に押し、退ける。


目の前に階段が現れた。

生暖かい風を感じる。


階段を駆け降りる。

地下は何かの実験室になっている様だ。


しばらく進むと巨大な鉄の扉が現れる。


扉に近付く

その瞬間カイルは殺気を感じとる。


背後を振り向く。


技術者らしきメガネの男が鉄パイプを振り上げ襲いかかってきた。


だが相手は素人。

動きが遅い。


カイルは鉄パイプを避け、男の後ろに素早く移動する。

そして腰からナイフを取り出し男の首につきつける。


そして

「すいませんががこの扉を開けてくれませんか?

鍵がかかっていて開かないんですよ」


カイルは淡々と男にナイフをつきつけながら語りかける。人を脅す時は静かに語りかけた方が効果がある。


「アンタはアルタイム軍の連中じゃないのか…?」


メガネの男がカイルに問いかける。


「違います。どっちかと言えばアルタイム軍を裏切った立場だけどね」


とカイルは答える。


「…!!って事はアンタはガイル将軍の知り合いかい?

なあ離してくれないか?」


メガネの男がガイル将軍と知り合いだとわかったカイルはナイフをしまう。


「突然襲いかかって悪かったな…」 

メガネの男はこちらに振り向き頭を掻きながら詫びる。


「こちらこそすいませんでした…」カイルも謝る。


「ガイル将軍は大丈夫か?」


「ええ。今は外で敵兵と戦っていますが…。」


「そうか…早い所魔導兵器の所に案内しようか。」


メガネの男が鍵をポケットから取り出し巨大な鉄の扉を開ける。


「貴方はいったい…?」


「自己紹介がまだだったな…

俺はダイソン=クレメント

只の技術者さ。」


ダイソンはカイルに手招きをしながら歩きだす。


「ロスト中将には俺が情報を横流ししたんだ。

ただ…兵器の位置しか教えてやれなかった。」


多分ガイル将軍の協力者なのだろう。


「君…名前は?」


「カイルです。カイル=ラフォーレと言います。」


しばらく進むと今度は木の扉が現れる。


ダイソンは鍵を開けようとする…が

「くそっ………!!!!」


鍵が開かない。


多分鍵が変更されたのだろう。


「ダイソンさん…下がって下さい。」


ダイソンが下がるのを確認するとカイルは勢いをつけてドアを蹴る。

2・3回程蹴るとドアが壊れる。


そこを通り抜けると更に扉がある。


「カイル君…この先に兵器がある…

ガイルもロスト中将も真実を知っている。」


「真実?」

カイルは嫌な予感がした。


「君の目で確かめてくれ…」


ダイソンが先に入る。

ダイソンの後にカイルが入った。


暗闇だ。


「今灯りをつけるよ。」


ダイソンの言葉と共に部屋が明るくなる。 

カイルは愕然とした。


「これが…魔導…兵器…………………!?」


なんて事だ…。

カイルは自らの目を疑う。

そこには………

両手を鎖で壁に繋がれた、恐らくカイルと同じ年齢だと思われる…銀髪で髪が長い…ぼろ切れに身を包んだ少女が地面に座りうつ向いていた…。


「…そう…彼女が…【魔導兵器】…ルナ=ウィッチだ………」


ダイソンが呟く。


カイルは彼女に駆け寄る。

そして彼女を拘束している鎖を刀で切断する。


その後、彼女を抱き抱える。


「大丈夫か…!おい…!」


カイルは強く…そして優しく語りかける。


彼女の目は死んだ様に濁っていた。


「…貴方…は…だ…れ…?」


どうにかカイルは声を聞き取る。

か細い、弱々しい声だ。


カイルの胸が痛む。

彼女の体は傷だらけだったからだ。


「大丈夫だよ…俺はカイル…君を…ルナを助けに来たんだ…」


「…良かっ…た…」


彼女は安心したのか目を閉じる。


カイルは一瞬焦るが、彼女は気が緩るみ気絶しただけだった。


カイルはそっと彼女を寝かせる。

そしてダイソンに

「これはどういう事なんですか…!!!!」


と震えながら問いかける。


「…そのまんまだよ…

アルタイム国では長くから人体に魔法物を埋め込み人間を魔導兵器にする計画が進んでいたんだよ…。

彼女での実験は成功したんだ。

それで軍上層部は彼女を魔導兵器として運用する案を出したんだ。


しかし上手くいったのは最初だけだった…。

彼女は魔法が使え無くなってしまったんだ。

それから彼女は失敗作として殺される予定だったんだ…。」


「…ダイソンさん貴方は…」


「罪の意識に耐えきれ無くてね…。古くからの友人だったガイルに相談したんだ…そしたら…ガイルが協力してくれたんだよ…。」


「ダイソンさん…。」


「さあカイル君…早く脱出しなさい。

そして彼女を安全な所まで守ってやりなさい。」


「ダイソンさんはどうするんですか?」 

「俺もガイル達に付いて行く。

アカツキ国にもアルタイムの事を説明しなきゃいけないしな」


ダイソンは力強く言う。


「なら早く一緒に逃げましょう…!」


カイルは寝ている彼女…ルナを起こさない様にそっとおぶる。


彼女の寝顔は可憐だった。


ダイソンさんと一緒にきた道を戻る。 

 

そして建物の外へとカイルとダイソンは飛び出す。


そこにはもう戦いが終わったのか、ロストが建物の出入口の所に座り込んでいた。


「ロスト中将…ガイル将軍達は?」


カイルはルナを起こさない様にロスト中将に聞く。 

「大丈夫だ…。皆ピンピンしているよ」


ロストは指差しながら答える。


指差す方向では、

マヒロとロックが馬をかき集めていた。ガイル将軍は少し離れた所で地図と睨み合っている。


するとロストがカイルにおぶられているルナとダイソンさんに気付く。


「ダイソンさん…!無事でしたか…良かった…。

それに彼女が例の…」


ロストがダイソンに問いかける。


ダイソンは黙ったまま頷く。


「そうか…とにかくガイル将軍の所に行こうか…カイル、ダイソンさん着いてきてくれ。」


ロストは立ち上がりガイル将軍の所へ歩きだす。


カイルとダイソンはロストに着いて歩きだす。


ガイル将軍がこちらに気付いたのか歩み寄ってきた。


「おうカイル!ご苦労だったな!!!

彼女が…そうなんだな?」


ガイル将軍が低く唸るように言う。


「ああ…ガイル…そうだ…。」


ダイソンさんが答える。


「ダイソン…!無事だったか!!」


ガイル将軍はダイソンさんの肩をバシバシ叩く。


「ガイル…早い所ここから退いた方が良い。

アルタイム軍の追撃がくるぞ…!!」

とダイソンが強く言う。


「確かにな…早い所ラスク砦に行きたいしのう…、

よし!!!馬を持って来い!!!ここから退くぞ!!!」


ガイルはそう大声で怒鳴る。


ガイル将軍の部下が馬を牽いてやってくる。


カイルは馬の上に寝ているルナを先に乗せ、素早く自分も飛び乗りルナが馬から落ちない様に体で包みこむ。そして馬を歩るかせる 

「ようカイル!!!お疲れ様だったな!!!」


ロックの声が響く


カイルが振り返るとロックがニヤニヤしながらこちらを見ている。


「うるせえロック!!!」


カイルはニヤニヤしているロックに水筒を投げつける。


「しかしねえ…オッサンから話は聞いたがまさかその女の子がねえ…」


ロックは飛んできた水筒を掴みカイルに投げ返す。


「ほらカイル!ロック!ボヤボヤして無いでさっさと行くよ!!!」


マヒロは馬を操っているロストの後ろで怒鳴る。


「耳元で怒鳴るなマヒロ!!!うるせえ!!!」


ロストがマヒロに怒鳴りつける。


カイルとロックの目の前でロストとマヒロの口論が始まった。


「あちゃー…始まったよ…

まあ良いや。

カイル!!!また後で色々話そうぜ!!」


ロックはそう言うと馬を駆けさせる。 

「カイル…まだカトルが裏切った事をロックに言うんじゃないぞ…!」


いつのまにか隣にガイル将軍が馬に乗って現れる。


「今はまだ早い。

ラスク砦に着いたら明かしてやれ。

それじゃワシは先に行って部下達を先導してくるかのう。」


その時だった。

ダイソンさんの顔がガイル将軍の巨体の後ろからヒョコッと現れる。


「カイル君…その娘を守ってあげてくれ…頼む。」


とダイソンが呟く。


「わかりましたダイソンさん…任せて下さい!」


ふとカイルは思い出す。

建物の中で集めた書類とネックレスを。 

懐から書類とネックレスを取り出しダイソンに渡す。


「カイル君これは?」


「建物の部屋で見つけた書類とネックレスです。

ダイソンさんが持っていた方が良いと思いまして…。」


「わかったよ。

書類は有り難く貰うよ。

あと…カイル君はこのネックレス触った時に何か感じたかい?」


「懐かしさと頭痛に襲われましたけど………それが何か…?」


ダイソンは一瞬考える表情をする。


「…ネックレスはカイル君が持っていてくれないか?」


「え…?でも……良いんですか?」


 

「多分このネックレスは君が持ってないと意味がないみたいだからね」


「わかりました…」


カイルはダイソンからネックレスを受取り懐にしまう。


「それじゃあねカイル君。

また後でね。」


ガイルは馬の歩く速度をあげて先頭に立ち、軍勢を先導し始める。


軍は少なくなってしまった。

敵軍に殺られた。人数は四分の一位にまで。


傭兵団にいたってはほとんどが逃げてしまっている。


しかし…肌寒い夜だ。

カイルは着ているマントでルナを起こさない様にそーっと包む。


馬の手綱を握り直し、軍勢の後ろの方を馬に歩かせる。


「……あれ…?……私は……?」


か細い声が聞こえる。


起こしてしまった。


「起きちゃった?ごめんな…」


カイルはそうルナに言う。


「私は……一体……」


「助かったんだよ君は…

安全だから安心して良いよ…。」


カイルは優しく語りかける。


「……助かったの?私……」


彼女の目から光る何かが流れる。


カイルは黙って彼女の頭をそっとなでる。


ルナはカイルに寄りかかる。


「大変だったな…君は…」


カイルは彼女の顔を覗きこみながら言う。

ルナの顔は疲れきった表情をしていたが目は輝いている。


「……カイル…さん?」


「カイルって呼んで良いよルナ。」


「…カイル…助けてくれてありがとう…」


ルナの肩が震えている。


彼女が今まで何をされてきたか考えるだけでカイルは胸が痛む。


「ルナ…君はいつからあそこに?」


「…私…記憶が無いの…思い出せるのは暗い闇だけ…」


「…本当にごめん…」


「…カイルは謝らなくていいのよ…」


「本当に君は頑張ったんだね…」


カイルは強く優しく言う。


「…ねえ…カイル…私疲れちゃった…少し寝るね…」


ルナは目を閉じる。


「おやすみ…」


しばらくするとルナが寝息を立て始める。


カイルはため息を吐く。


アルタイム国は何を企んでいるのか?

魔導兵器の真実。

悲しい事実を背負うルナ。

カトルの裏切り。


夜は明けていく。

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