其之六 キツネの嫁入り
俺こと一条雅樹は、今日結婚式を挙げる。相手は、月見里学園高等部で知り合った、ルナリス・フォン・シラー、通称ルナ。
都内にある教会で式を挙げ、みんなが待つ外へと扉を開く。
雲一つない、本当に眩しいくらいの青い空が広がっている。
ルナが白いブーケを青空になげ、それが誰かの手に収まる頃、雲一つない空からパラパラと雨が降りてきた。
キツネの嫁入り
そんな言葉を思い出した。
お天気雨は『キツネの嫁入り』。お嫁にいくキツネが人間には見せたくなくて雨を降らすらしい。
嫁入りじゃなくて嫁を貰うんだけどな、と、的外れなことを思う。
「雅樹、見て」
ルナが嬉しそうに空を指した。
そこには天気雨が描く虹があった。
空からみんなへと視線を戻した時、もう逢うことはないだろうと思っていた『あの人』が見えた。はっきりと見ようと視線を向けた時には、その姿はそこにはなかった。
まさか、な。
少し驚いたような表情をした俺を、ルナは不思議そうに見上げていた。
俺は極上の笑みを浮かべ、ルナを抱き上げて額にキスをおくる。
「幸せになろうな、俺たち」
『雅樹・覚醒』これにて完結です。つたない文章でしたが、最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
高校生の頃から温めていた話をアップできてほっとしています。
月見里学園のお話をこれから少しずつ書いていきたいと思います。また、お付き合いいただければ光栄です。