其之二
無意識に攻撃してしまったあの人は無事だっただろうか。直接顔を見たわけじゃないが、あの気は女性のものだった。
あれから1週間が過ぎたが、あれ以来何の接触もなかった(とはいえ、俺の気を読み取られないように努力してたんだから。あたりまえだが)。
あの時間に近くにいたというと、ここの生徒か教師の可能性が高い。元狐の俺がいるくらいだから、術者がいないとは言い切れない。しかも、ここは月見里学園。一癖も二癖もある生徒が多いのだ。
あの女性は許してくれるだろうか。
俺という存在を。
「なぁ、伸征。女の人ってロマンチスト?」
たまたま俺の部屋に漫画を読みに来ていた友達に話しかける。伸征は意外そうな表情で俺を見る。
「何、彼女でもできた?女ってのは現実主義者さ。一見ロマンチストに見えるだろうけど、それは見せかけだけさ。女は夢は見るけど、男のように夢だけを追わず、しっかりと現実を見つめているんだ。あんまり夢物語を言ってると、女に捨てられるから気を付けろよ」
「別にそんなんじゃないよ。ただ聞いてみたかっただけ」
あ、そう。そう答えて、伸征はそれ以上聞かずに漫画に視線を戻した。
許してください、俺の存在を。
まだ、ここにいたいのです。
あなたは許してくれるでしょうか、俺の存在も。
幻と現の真ん中にいる、俺の存在を。
女性は現実主義者。俺が言うことは綺麗ごとだと笑うでしょうか。
人間としての生命を生きたいというのは、許されないことでしょうか。