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其之一
幻世と現世の狭間で、何かを思い出していた。
『俺』の名前は『一条雅樹』
月見里学園高等部1年。科学部。
両親は考古学者で、現在二人して海外に行っている。兄は大学生だが放浪癖があって目下失踪中。
では、これは何?
『私』の名前は『樹』。
あの方とともに存在べき者。
それ以外に存在理由はない。
同時に二つの記憶が頭の中に現れる。
ふわふわとした時間の中、誰かに見られているような視線に気が付いた。
人?
『術者だ』
俺ではない私が呟く。
術者、それは我々の敵。
『私』の意識が俺の中で強まった。
いけない!
『俺』がとめる間もなく『私』が術者に力を放った。
相手がそれを避けられたかは解らなかった。
しばらくして目が覚める。
いつもと変わらない、高等部寮の自分の部屋。
あれは夢だったのだろうか?
そう思いたい。
だけど、少し頭痛がする『俺』の記憶の中に、『私』が有していた過去の記憶が存在し、夢ではなかったと主張していた。