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〜めくれ〜

鮮やかな朱色に染まった空に魅入っていた。


暫くの間空を見上げていたいた男が我に返る。







静かだ。






静かすぎる。



何か得体のしれない恐怖感が

男の全身を覆った。


辺りを見回しその原因に行き着く。



誰も居ない。

人も車も何も居ない。


そういえばさっきまで昼過ぎだったはず、

それが急に夕方になった。

いや、そもそも夕方なのか?

どう考えても時間という概念を逸脱している


昼過ぎに家を出て近所の幹線道路沿いにある

自動販売機でジュースを買っただけで

夕方になるものか?


いや、断じてならない。

もしなったのだとすればそれは自分の脳みそに

異常があるのだろう。


軽いパニックを起こしながらも男は

誰でもいい、誰か人を探さないといけない

衝動に駆られた。


自分だけ別世界に取り残された………。


男は愛車をその場に置いたまま辺を一通り走り回った




駄目だ、誰も居ない………。



男が愛車のバイクではなく走る事を選んだのはバイクよりも

小回りが効き有事の際にはすぐに身を隠せると

本能的に判断したからだろう。


男の本能は自然と正解を導き出していた。


男が落胆しながら元居た場所まで戻り愛車の脇に座り込んで

途方にくれていると微かだが、自動販売機の機械音に混って声が聞こえて来た。



耳を凝らすと「ヴヴヴ」という心臓の奥が痒くなるような

低い機械音と重なって啜り泣く声が聞こえる。


男は慌てて立ち上がり声を辿る


やはり声は自動販売機の方から聞こえてくる様だ。


自動販売機の前に立ち耳を当てると声は消えた

しかし耳を離すとまた聞こえて来る。


男は何かに気付いた様子で自動販売機の裏に回り込むと恐る恐る

覗き込んだ。



小さな、年の頃で小学校低学年位だろうか、男の子が膝を抱えて

静かに泣いていた。


すぐに声をかけようとしたが思い留まった。

急に声をかけて驚かせては悪いと思ったからだ、

男の子を驚かせてしまったら消えてしまうかもしれない

そんな錯覚すら覚える程、男には待ち焦がれた存在であり

大切な運命共同体という仲間なのだ。


男は悟られないように一度深呼吸して弱々しく声を掛けた。


「…こんにちは、どうしたの?」

優しく声を掛けたつもりだったが、男の子は顔を上げると

目を見開いて明らかに驚いている様だった。

男は慌てて言葉を続ける


「怖がらないで。オジさんも迷っちゃったんだ。

君も迷っちゃったんでしょ?」

両の掌を開き前に突き出す格好で弁明に近い説得を続ける。

男の気持ちが通じたのか、男の子はゴシゴシと涙を拭くと

無理に作った歪な笑顔で応えた。


男はその子の顔を見て驚愕した

両眼がくり貫かれ、瞳があった場所は虚空を湛えながらも

しっかりとこちらを見つめていたのだ。

そして次の瞬間男の子は鼓膜を劈く様な金切り声をあげ

叫び出した。


「ここだぁぁぁぁぁ!

ここにいるよぉぉぉぉ!

ここにいるここにいるここにいるここにいるぅぅ」


叫び声を止める事が出来ず硬直したまま動けずにいた。

その間にももげる程首を振り乱しキィキィと叫び続けていた。


叫び始めて数十秒、男のすぐ背後でシャランと音が鳴り

背中に冷んやりとした一筋が走った。


男が恐る恐る振り返る

男の視界の端にそれが映った瞬間

止めてあったバイクに乗り乱暴に走り出した。


男が猛スピードで逃げる後ろで声が聞こえた


「めぇくれ〜」

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