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第93話:拒絶の理由 魔装槍が触れないもの

山頂直下の空洞は、

音を吸い込むように静まり返っていた。


白銀の岩壁。

光でも闇でもない、

“定着した律”だけが空間を満たしている。


アランは、一歩踏み出しかけ――止まった。


槍が、はっきりと震えている。


拒否。

迷いではない。


(……進むな、ってことか)


リリアが異変に気づく。


「アラン……槍が」

「共鳴してない……いえ、遮断されてる?」


レオンハルトが眉をひそめる。


「遮断?」

「ここは魔力も流れてるのに?」


リリアは、ゆっくりと首を横に振った。


「流れてる、のよ」

「でも――循環してない」


その言葉に、ダリオが反応する。


「循環してない、だと?」


リリアは魔道具を地面に置き、

慎重に説明する。


「今までの異変は全部、“暴走”だったの。

律が歪んで、溜まって、耐えきれずに噴き出していた」


「だから壊せた」

アランが静かに言う。


「“間違ってた”から」


リリアは、はっきりと頷いた。


「でも、ここは違う」


彼女は、岩壁に手をかざす。


「この山は――」

正しく定着している」


空気が、わずかに揺れた。


「律が、過剰でも欠落でもない。

自分自身を“核”として、安定しようとしているよ」


レオンハルトが息を呑む。


「それじゃ……、ここは……」


「“ダンジョン未満”じゃない」

アランが続ける。


「ダンジョン化の対象じゃない」


槍が、さらに強く震えた。


拒絶は、警告ではない。

否定でもない。


(……資格が、違う)


アランは、はっきりと理解した。


(この槍は――

 壊すための媒介だ)


白霜峡では、

紅砂帯では、

“歪んだ律”に触れ、切り裂くことができた。


だが――


「ここは壊れちゃいない」


リリアが言う。

「だから、魔装槍は――

 触れられない」


沈黙。


ダリオが、低く息を吐く。


「つまり……

この山は、敵じゃないと?」


「でも、放置もできない」

アランが言った。


「このまま定着すれば――

山全体が一つの核になる」


リリアの表情が引き締まる。


「ええ。

それはもう“魔獣”でも“ダンジョン”でもない」


「土地そのものが――」

レオンハルトが、言葉を探す。


「――存在として、固定される」


アランは、槍を見下ろした。


(だから、拒まれた)


(壊す武器じゃ……足りない)


そのとき。


山の奥から、

低く、穏やかな“声なき振動”が伝わってきた。


敵意はない。

威圧もない。


ただ――


選別。


リリアが、はっと息を吸う。


「……アラン、これ……」


「試されてる」

アランは答えた。


「“壊せるか”じゃない。

“関われるか”だ」


槍の震えが、ほんの一瞬だけ――弱まった。


完全には止まらない。

だが、拒絶一色でもない。


ダリオが決断する。


「今日は、ここまでだ。

無理に踏み込む必要はない」


誰も反論しなかった。


アランは、山を見上げる。


(壊せないなら……

別のやり方がいる)


白銀の槍は、まだ答えを出していない。


だが確かに――

次の段階を、要求していた。


山は、静かに息をする。


それは戦いの前兆ではなく、

対話の始まりだった。


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