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最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


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第87話:山岳異変 魔装槍を持つ光導士

帝国西部・グラシア山脈。


切り立った岩峰の合間を、冷たい風が吹き抜けていた。

雲は低く垂れ込み、空は重たい鉛色に染まっている。


その山道を、一個小隊が進んでいた。


先頭を歩くのは、雷の魔導士――ダリオ。

その後ろに、魔道具を操作しながら周囲を警戒するリリア。

そして、少し距離を置いて並ぶ二人の魔導士。


ひとりは、黒い外套に細身の杖を携えた青年貴族。

レオンハルト・ヴァルディス。


もうひとりは――

白銀の槍を背負った、異質な存在。


アランだった。


レオンハルトが、ちらりと横目で槍を見る。


「……なるほど。

 聞いてはいたが、実物を見ると奇妙なものだな」


その声には、隠そうともしない侮蔑が混じっていた。


「貴族が“武器”を持つ時代になったとは。

 帝国も、ずいぶん余裕がなくなったらしい」


アランは答えない。

ただ、前を見据えたまま歩き続ける。


代わりに、リリアが足を止めた。


「武器じゃないわ」


レオンハルトが眉を上げる。


「ほう?

 では何だと?」


リリアは、淡々と告げた。


「魔装槍よ。

 直接干渉型の魔導媒体」


「……媒体?」


「ええ。

 杖と同じ役割を持つ。

 それどころか――」


リリアは振り返り、アランの背中を見た。


「生成途中のダンジョン。

 歪んだ地脈核。

 “律”そのものに、直接触れられる」


レオンハルトは鼻で笑った。


「馬鹿な。

 魔法は距離を取るから制御できる。

 触れる? そんな危険な真似――」


そのとき。


ズゥ……ン。


山の奥から、低い振動が伝わってきた。


足元の岩が、微かに震える。


ダリオが即座に声を上げた。


「止まれ!

 ……この揺れ、地震ではない」


リリアの表情が変わる。


「魔力反応……来るわ!」


アランは、無意識に槍へ手を伸ばしていた。


白銀の柄が、かすかに熱を帯びる。


(……山が、呼吸してる)


空気が、重い。


山肌の奥――

岩盤の裂け目から、淡い光が漏れ始めていた。


レオンハルトが舌打ちする。


「山岳地帯での魔力集中?

 まさか……」


リリアが即答した。


「ええ。

 ただの魔脈集積点よ」


「なら――」


「でも」


リリアは言葉を切る。


「この揺れは、“ダンジョン化の前兆”」


その瞬間。


バキン――ッ!!


岩壁の一部が、内側から砕け散った。


魔力を帯びた岩塊が浮き上がり、

その中心で、何かが“組み上がっていく”。


レオンハルトが反射的に杖を構えた。


「来るぞ!」


「待って!」


リリアの制止は、間に合わなかった。


「《グラウンド・バインド》!!」


土属性の魔法が放たれる。

だが――


岩塊に触れた瞬間。


ジュゥ……!!


術式が、歪んだ。


「なっ……!?」


魔法陣が崩れ、

土の魔力が“吸われる”ように消える。


リリアが叫ぶ。


「やめて!

 この異変――“魔力循環を拒絶してる”!」


アランは、前に出た。


「俺が行く」


レオンハルトが振り向き、声を荒げる。


「正気か!?

 武器持ちが前に出る場面じゃ――」


アランは静かに言った。


「これは、杖じゃ触れない」


そして、槍を構える。


白銀の光が、山の裂け目と共鳴した。


岩塊の奥で、何かが“核”を形成し始めている。


(……やっぱりだ)


(ここも――

 “触れないと止まらない”)


ダリオが低く唸る。


「……お前の魔法、通じなかったぞ」


レオンハルトは、言葉を失ったまま、

アランの背中を見つめていた。


槍を構え、

迷いなく前へ進む姿を。


(あれは……魔導士なのか?)


アランが、一歩踏み出す。


「行くぞ。

 ダンジョンになる前に、止める」


白銀の槍が、山岳の“歪み”を指し示した。


山が、低く唸る。


――山岳異変、発生。


小隊は、まだ知らない。

この山での戦いが、

帝国の魔導戦術そのものを揺るがすことを。


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