第83話:分断される赤砂 核主の反撃
核主が、低く唸った。
それは怒りではない。
“理解”の音だった。
――獲物が、危険だと。
砂漠が再び脈動する。
ズズズズ……ッ!
割れた核の周囲から、赤い砂が逆流するように集まり、
核主の背中で残った核同士が光の糸で結ばれていく。
リリアが歯噛みする。
「まずい……!
核同士で循環を再構築してる!
一つ壊した程度じゃ、もう止まらないわ!」
アランは槍を構え直す。
(反撃が来る……)
その瞬間――
核主の腹部が大きく開いた。
内部で、赤核とは異なる黒く濁った光が渦を巻く。
「……っ!?」
リリアが叫んだ。
「アラン、退いて!!
それ――“反転噴出”!!」
間に合わない。
次の瞬間、
砂そのものが“爆ぜた”。
ドォン――!!
衝撃波が地表を抉り、
アランの体が吹き飛ばされる。
「――っ!!」
空中で体勢を崩した瞬間、
砂嵐が刃のように迫る。
(このままじゃ……!)
咄嗟に、槍を地面へ突き立てた。
白金の光が走り、
砂嵐の進路が僅かに逸れる。
ドサッ!
地面を転がり、アランは咳き込んだ。
「くっ……!」
リリアが駆け寄ろうとするが――
「来るな!!」
アランが叫ぶ。
核主が、ゆっくりと向きを変えた。
赤い双眼が、今度はリリアを捉える。
「……っ!」
リリアの足元で、砂が盛り上がる。
(狙いを――分けてきた!?)
核主の背中から、
赤核の一つが切り離され、宙に浮いた。
リリアが息を呑む。
「分離核……!
アラン、あれ――
独立行動型の副核よ!!」
副核が脈動し、
周囲の砂が刃の形へ変わる。
「リリア!!」
アランは即座に走り出す。
(分断させる気だ……!
俺とリリアを――!)
だが、核主の前脚が地面を叩いた。
ゴォンッ!!
地面が隆起し、
アランとリリアの間に砂の壁が立ち上がる。
「――っ!」
視界が遮断された。
リリアの声が、壁の向こうから響く。
「アラン!
私は大丈夫!
副核なら――抑えられる!!」
(信じろ……!)
アランは歯を食いしばり、前を向いた。
核主が、ゆっくりと迫ってくる。
残る核は――三つ。
だが、一つ割れたことで、
動きが僅かに鈍っている。
(今なら……本体を削れる!)
槍が、低く唸った。
白金と橙が交互に揺らぎ、
“どちらの律を使うか”を選んでいる。
アランは深く息を吸う。
(焼かれるか、凍らせるかじゃない。
――“通す”んだ。)
足を踏み出す。
「行くぞ……!」
核主が咆哮し、
砂漠が再び荒れ狂う。
だがアランは止まらない。
次に狙う核は――中央。
最も大きく、
最も循環を支えている場所。
(ここを――叩く!)
赤砂の嵐の中、
白金の光が、一直線に走った。




