第79話:紅砂の獣 灼熱反転
赤い砂漠が脈打っている。
灼裂種は砂鉄のような黒外殻を軋ませ、
背中の赤核を脈動させながら、アランたちを見下ろした。
リリアが後退しながら叫ぶ。
「アラン、気をつけて!
灼裂種は火属性じゃない、あれは――」
アランが槍を構えながら聞く。
「火じゃないのか?」
「違う!
“熱を生み出さずに、魔力を焼く” の!
魔法そのものを焼却する……“灼熱反転”よ!!」
アランは息を呑んだ。
(魔力を……焼く?
そんなの、聞いたことが――)
灼裂種が砂地を蹴った。
砂が爆ぜ、黒い殻がきらめく。
次の瞬間――
赤い閃光 が一直線に走った。
「《ホーリーランス》!!」
アランは反射的に光の槍を放つ。
純白の光槍が赤い閃光と衝突した――その刹那。
ジュッ……!!
光槍の中心が、まるで“炎に触れた氷”のように、
音を立てて溶け落ちた。
「……えっ!?」
リリアが息を呑む。
アランも目を見開いた。
(《ホーリーランス》が……焼かれた……!)
灼裂種が口腔を開き、
再び赤い弧光を放つ――!
リリアが叫ぶ。
「アラン、避けて!!
光魔法は相性最悪……!!」
アランは転がるように回避し、
砂地に着地した瞬間、
周囲の砂が“赤く発火”するように光った。
(砂が……熱じゃなくて、魔力に反応して燃えてる!?)
灼裂種の核が脈動する。
ゴウッ……!!
そのたびに、砂地の粒子が赤核に吸われ、
魔力の形を変えて空間へ放出していた。
リリアが魔道具を開きながら分析する。
「アラン、あれ……
“魔力循環破壊” を起こしてる!」
「なんだ、それ……!」
「外の魔力を吸って、
“逆流させて熱に変換する”のよ!
だから魔法を出すと……焼かれる!!」
(つまり、魔力の攻撃が使いづらい……
白霜峡とはまったく違う性質だ。)
アランは槍を握り直す。
(なら、やることは一つ――
近接戦で突破するしかない!)
灼裂種が低く身をかがめる。
赤い眼孔が、アランだけを捉えた。
ズザアアアッ!!
砂地を引き裂きながら突進してくる。
アランは膝を沈め、
槍を構える。
(間に合え……!)
刹那――
灼裂種が跳びかかった。
「――っ!」
その瞬間、
アランの槍が“白金から橙へ”と色を変えた。
槍は震え、
まるでアランの手を導くように角度を変える。
(……共鳴?
また――導かれてる!?)
灼裂種の赤核が目前に迫る。
アランは槍を突き出し、叫ぶ。
「《ルミナエッジ――橙閃》!!」
槍が光をまとった瞬間、
光は赤熱へと“反転”し、逆に灼裂種へ跳ね返った。
リリアが驚愕する。
「アランの光……“焼けずに反転してる”!?
槍が灼熱の律を……吸収してる?」
灼裂種が咆哮を上げ、後退した。
アランは息を整えながら悟る。
(この槍……
白霜峡で氷哭の核に接続して……
今は紅砂帯の“灼熱の律”を吸ってる。)
(やっぱり――
“導かれる”って、こういうことか。)
灼裂種の核が再び脈動し、
砂漠全体が赤く染まる。
リリアが叫ぶ。
「アラン!!
核の律、まだ“胎動”してる!!
灼裂種は……ただの前触れよ!!」
風が逆巻く。
砂の下から、
巨大な鼓動のような音が響いた。
ズゥゥゥン……!!
アランは顔を上げた。
(いる……
この砂漠のどこかに――“核の本体”が。)
槍が震え、
赤い砂風を割るように指し示した。
アランは槍を構え、
前を見据える。
「行こう、リリア。
本当の“異変”は……ここからだ。」
灼裂種が再び吠え、
紅砂帯が揺れた。
赤い砂漠で――
次の戦いが幕を開ける。




