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第78話:紅砂帯へ 灼熱の律

白霜峡を離れた一行は、帝国輸送車マギ・キャリアに乗り込み、南方へ向けて走り出した。


魔導車の下では、魔力駆動の車輪がかすかに光り、凍土から砂地へと地形が滑らかに変わっていく。


アランは車内で魔装槍を見つめていた。


刃は白金のままだが、氷哭竜を貫いたときの“律の残響”が、まだ微かに腕へ伝わってくる。


(……この槍、やっぱり普通じゃない。)


リリアが隣の席からのぞき込んだ。


「まだ震えてるの?」


「少しだけ。

 だけど……嫌な感じじゃないんだ。

 どっちかと言うと、次に進めって背中を押されてる感じ。」


「――本当に共鳴体質なんだわ、アラン。」


リリアは小さくため息をつく。


「共鳴する魔装器って、普通の魔導具とは違うのよ。

 意思がある。

 導かれるって人もいる。」


アランが首をかしげる。


「導かれるって……どういう?」


「“律の源”へ。

 魔装器は、本来の使命を果たすために動くの。

 それに触れた人間も、同調してしまうことがあるわ。」


アランは槍を見つめたまま、言葉を失った。


(俺は……導かれている?

 白霜峡で……氷哭竜の核に触れたときみたいに……?)


車両が振動し、隊長の声が響いた。


「前方、紅砂帯に入るぞ!」


車外の景色が一気に変わる。


白い雪原は消え、

代わりに 赤金の砂漠 が地平線の向こうまで広がっていた。


地表には熱で揺らぐ陽炎。

空には赤い砂の粒子が舞い、光に反射して金属光沢を帯びている。


リリアが顔をしかめた。


「うわ……。

 もう、魔力が不安定になってる。」


アランも肌で感じた。


(熱い……。

 けど、それだけじゃない。

 火じゃない“別の熱”だ……。)


そのとき、車体が急にきしんだ。


「隊長!? 車両、熱で干渉されてます!!」


操縦士の声が緊迫する。


車体の周囲に赤い波紋が走り、

魔導車の動力符文がバチバチとはじけた。


「魔力反転現象だ!

 外部の魔力が“逆流”してる!」


隊長が叫ぶ。


「全員降車準備!

 ここから先は徒歩で進む!!」


アランとリリアは車外へ飛び降り、灼熱の空気に顔をしかめた。


砂地は赤く脈動し、

まるで“心臓”のようにリズムを刻んでいる。


リリアが小声でつぶやいた。


「この魔力……氷哭とは正反対……。

 “灼熱のりつ”……?」


アランは槍の光がわずかに黄金から橙へ揺らぐのを見た。


(槍が……また反応してる。)


そのとき――


ズゥウウン……!!


砂地の下から、低い音が響いた。


砂が盛り上がる。

ひび割れ、赤い光が漏れ出す。


アランとリリアが身構えた瞬間――


砂の中から“角を持つ影”がゆっくりと立ち上がった。


四足獣のようだが、

外殻は砂鉄のように黒く、

背には灼熱を帯びた“赤い結晶核”が脈動している。


リリアが叫ぶ。


「……もう現れてる!!

 “灼裂種しゃくれつしゅ”よ!!」


アランは槍を構えた。


「また“核化”か……!」


獣の眼孔が赤熱し、

砂漠全体が震える。


ギャアアアアアアアアッ!!


凶暴な咆哮が、砂の地平を揺らした。


アランは息を吸い込み、

光を槍に集める。


(来い……!

 白霜峡とは違う“熱の律”、

 見極めてみせる!!)


赤い砂漠で――

新たな“異変の中心核”との戦いが始まろうとしていた。


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