第75話:共鳴解放 白金の槍、目覚める
白霜峡の中央――
氷哭竜が翼を広げた瞬間、
峡谷そのものがうなりながら凍りついていく。
空気が硬質化し、地面の亀裂が白金色に染まる。
リリアが叫ぶ。
「アラン、あれ……!
峡谷全域を“氷界”に変えるつもりよ!」
「わかってる……止める!」
アランは踏み込み、槍を構えた。
魔装槍は――氷刃核との共鳴を続けている。
槍身が微かに震え、内部から光が漏れ出す。
リリアが息を呑んだ。
「ちょ、ちょっと待ってアラン!
それ……まだ封印状態なんじゃ――」
「今、勝手に“開いてる”!」
氷哭竜は地脈の中心に陣を刻み始めた。
白く輝く六角の氷紋が峡谷全体に広がる。
(この結界が完成したら……
帝都の北側、全部が“永久凍土”になる)
アランは深呼吸をした。
そして――
槍を胸元に引き寄せ、魔力を通した。
槍が震える。
槍身に刻まれた紋様が、薄く、揺らぎながら輝きはじめた。
(この槍……“拒んでない”)
アランは直感した。
これは核の共鳴。
氷哭竜という巨大な“凍結律”への反応。
(だったら――呼応させて、使う!)
アランは叫んだ。
「――《ルーメン》!!」
光が槍全体に走る。
そして、次の瞬間――
槍が“音を立てて”展開した。
カシィンッ!!
槍身の節が全て解放され、
内部に封じられていた光の芯が露出する。
リリアが悲鳴を上げた。
「ちょ、ちょっとアラン!?
その槍……何!?」
「俺も知らないッ!!
でも――使える!!」
アランは槍を構えた。
光の芯から、淡く白金の光が吹き上がる。
氷哭竜がアランに気づき、咆哮を上げた。
グァアアアアアッッ!!
その巨体がアランへ向けて氷の翼を打ち下ろす。
リリアが魔法を発動。
「《テンペスト・ランス》!!」
嵐のような風槍が氷の翼を削り取る。
アランも続いた。
「行くぞ―――!」
地を蹴った瞬間、白霜峡の地面が砕けた。
アランは、氷哭竜の懐に飛び込み――
槍を突き出す。
「《ホーリーランス》!!」
しかし……。
光槍は氷哭竜の胸の“外殻”で弾かれた。
キンッ!!
アランの目が狭まる。
(……硬い。
外からじゃ貫けない――なら……)
冷気が迫る。
アランは槍を引き、
光をさらに集中させる。
「――“中心核に響け”」
槍身の白金光がさらに強まる。
リリアが驚愕の声を出した。
「共鳴強化……!?
そんな制御、できるの……!?」
「やるしかない!!」
アランは跳び上がり、
氷哭竜の首元へ槍を突き立てた。
「《ルミナエッジ――共鳴閃!!》」
光の刃と槍の震動が重なり――
氷哭竜の外殻がついに“裂けた”。
ガキィンッ!!!
竜が咆哮し、氷霧を吹き散らす。
リリアが叫ぶ。
「アラン! 割れた!!
そこからなら内部に届く!!」
アランは地面に着地すると同時に、
槍を構えなおした。
竜が体勢を立て直し、
峡谷全域を凍結させるために魔力を高めていく。
アランの槍が白金に輝き、
風が彼の背を押した。
「次で決める……!!」
白霜峡決戦――
決着の瞬間が迫っていた。




